「個」と「組織」それぞれの能力を向上し、「個」と「組織」のよりよい関係を築くために
                                    

NHK World (英語版 視聴料フリー!)

NHK World (英語版 視聴料フリー!)
画像をクリックすると、海外向け英語放送が24時間が流れるサイトにつながります。

Channel NewsAsia International (英語版 視聴料フリー!)

Channel NewsAsia International (英語版 視聴料フリー!)
画像をクリックするとシンガポールからの英語ニュースが24時間流れるサイトにつながります。

Al Jazeera English: Live Stream (英語版 視聴料フリー!)

Al Jazeera English: Live Stream (英語版 視聴料フリー!)
画像をクリックすると中東カタールからの英語ニュースが24時間流れるサイトにつながります。

Bloomberg TV (英語版 視聴料フリー!)

Bloomberg TV (英語版 視聴料フリー!)
画像をクリックすると、24時間ビジネス経済情報が英語で流れるサイトにつながります。

「アタマの引き出し」は生きるチカラだ!(姉妹編ブログ)

「アタマの引き出し」は生きるチカラだ!(姉妹編ブログ)
「専門知識」×「雑学」がビジネス思考の「引き出し」幅を拡げる! 最新投稿は画像をクリック!

MVVの3文字で、個人と組織にブレない軸とブランドをつくる!

MVVの3文字で、個人と組織にブレない軸とブランドをつくる!
このブログの執筆者が運営している facebookページです。

「日本型リーダーシップ」の基本は山本五十六にあり!

「日本型リーダーシップ」の基本は山本五十六にあり!
「やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ」 には続きがあった!





東南アジア・ビジネスは背景をよく知ってから!

■■■■ 「ミャンマー再遊記」 全8回+α ■■■■
 総目次はここをクリック!
■■■■ 「三度目のミャンマー、三度目の正直」 全10回+α ■■■■
 総目次はここをクリック!
■■■■ 「タイのあれこれ」 全26回+番外編 (随時増補中) ■■■■
 総目次はここをクリック!



会社ウェブサイトは
 http://kensatoken.com です。

ご意見・ご感想・ご質問は ken@kensatoken.com にどうぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。   


  

2014年6月3日火曜日

書評 『レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか-爆発的な成長を遂げた驚異の逆張り戦略-』(ヴォルフガング・ヒュアヴェーガー、長谷川圭訳、日経BP社、2013)-タイの 「ローカル製品」 を 「グローバルブランド」に育て上げたストーリー


「レッドブル」は日本でもすっかり有名になったエナジードリンクですね。本書はそのレッドブルが世界商品に成長した過程を描いたビジネスノンフィクションです。

どれだけの人が気がついているか知りませんが、じつはレッドブルを販売しているのはオーストリア企業です。オーストラリアではなくオーストリア。豪州ではなく欧州。

しかもモーツァルトの生まれ故郷ザルツブルクの近くに本社を置いています。

エナジードリンクとモーツァルトはフツーはぜんぜん結びつきませんが、なぜオーストリアでしかもザルツブルクなのか? それはレッドブルを「世界商品」に成長させ、「世界ブランド」にしたのがこの近くで生まれ育ったオーストリア人だからです。

しかもその創業経営者はクロアチア系オーストリア人のマーケッター。クロアチア系というのは、クロアチアがハプスブルク帝国の一部であった時代の名残ですね。

マスコミ嫌いで、プライベートライフを大事にする姿勢を貫いているためほとんど露出がありません。本書もまたインタビュー取材ができなかったので、すでに雑誌などのマスコミに発表されている記事をもとに、関係者を取材して本にしたものです。ですからちょっと物足りない感じがなくもありませんが・・。


ビジネスのヒントは日本から、製品はタイのローカル商品から

創業経営者のマテシッツ氏は、もともとは英蘭系の食品コングリマリットのユニリバーでマーケッターとして成功したビジネスマン。英語には堪能だということです。戦後タイプの欧州人なのでしょう。

自分でビジネスをやりたいと考えていたときに出会った雑誌記事の長者番付で、日本の大正製薬のことを知ります。日本では圧倒的に有名なリポビタンDというスタミナドリンクで財産を築いたということが強く印象に残ったようです。

そんなときユニリバーのフランチャイザーであった華人系タイ企業で出会ったのがレッドブル。そうです、レッドブルはもともとタイのスタミナドリンクなのです。

このブログでもすでに書いてますが、タイの「ローカル製品から、「グローバル製品」として脱皮させたのはタイ人ではなく、なんとオーストリア人の企業家だったのです。

(これがタイの「レッドブル」=「クラティンデーン」 筆者撮影)

日本で缶入りの「レッドブル」を飲んだことのある人なら、タイで「レッドブル」(=クラティンデーン:赤い牛)を飲むと、日本で売っている缶入りのレッドブルは、すでに別物になっていることに気がつくはずです。成分を改良し、味も洗練された普遍的(=ユニバーサル)なものに改造されているからです。

(Made in Austria の文字に注目! 筆者撮影)

これは「ローカル製品のグローバル化」と言えるでしょう。分野は違いますが、武道としての柔道が日本人によってではなく、主に欧州人によって Judo として全世界に普及していったプロセスと似ているかもしれません。

タイのレッドブルに惚れ込んだ創業経営者のマテシッツ氏は、タイのユーウィッタヤー家からレッドブルのアジア地域外での販売ライセンスを取得し、合弁でレッドブル・マーケティング社を設立。これはちょうどいまから30年前の1984年のことだったようです。

タイとの合弁は、創業経営者が49%でタイ側が51%(・・会社が49%で個人が2%)のようですが、本社はオーストリアで登記しているようなので、タイの法律に従ったわけではなさそうです。

タイ側としてはレッドブルの世界的成功は評価しており、とくにクチを出さないのだとか。タイ側のパートナーはすでに死去して息子が事業承継してますが、とくに問題は起こってないようです。創業経営者のマテシッツ氏のたぐいまれなる手腕に満足しているということでしょう。

ただし、タイ側パートナーの孫が引き起こした事件は、タイでは大きなスキャンダルになってましたが・・・


地元オーストリアにこだわる姿勢

オーストリア企業で世界ブランドといえば、本書でも触れられていますが、日本でも有名なクリスタル製品のスワロフスキーくらいしか思いつきません。

そのオーストリアで、この四半世紀で急成長したのがレッドブル。じつはわたしもレッドブルがオーストリア企業だということには長く気がついてませんでした。オーヅトリアはドイツ語圏ですが、ドイツやスイスと比べると、あまりビジネスという点では話題になることがないからでもあります。

オーストリア企業であるという以外のきわだった特徴はそれだけではありません。

創業経営者がマスコミへの露出を嫌っているだけでなく、非上場に徹し、しかも無借金経営。本体はマーケティングとブランド・マネジメントに特化して、製造部門はもたずに完全に地元メーカーにアウトーソシング。ファブレスというビジネスモデルといってもいいでしょう。

税金の高いオーストリアで納税し、地元で雇用をつくりだし、地域経済を重視する姿勢は、グローバル企業に大成長した現在でもかたくなに変えることはないようです。郷土愛、地域愛が根底にあるのでしょう。

(ドイツ語版のカバーは創業経営者と本社ビル)

マーケティングとブランド・マネジメントに特化していても、広告宣伝は代理店まかせにせず、事業としてのスポーツビジネスとスポーツマーケティングをつうじてシナジー効果を狙うという姿勢。

そもそも創業経営者自身が大のモータースポーツ好きであるだけでなく、スポーツのもつ特性がエナジードリンクの商品特性にフィットし、ブランド育成に多大な効果をもっていることをマーケッターとして熟知しているからなのでしょう。

マーケティングとブランド・マネジメントに特化するという姿勢は、スイスのグローバル企業ネスレにも共通するものがありますね。

そもそもマーケティング(marketing)もブランドマネジメントも英語圏のアメリカで発展したものですが、欧州では伝統的に重視されてきたブランドを中核に置くという姿勢とあいまって、レッドブルというブランドとして花開いたのでありましょう。

あらたにブランドを立ち上げて成長させるのは、そう簡単なことではありません。しかし、レッドブルのケースにおいては、元ネタも発想も自分で考え出したものではありませんし、先進国や地元から生まれたものでもありません

本書では強調されてませんが、わたしとしては、レッドブルはタイで生まれたスタミナドリンクであり、それを世界ブランドに育て上げたのがオーストリア企業であることに、日本企業はもっと注目してほしいと思います。

それはローカル商品をグローバル化し、しかも新規進出先ではローカルマーケットにあわせてローカライズするという循環。そのエッセンスには学ぶべきものが多いといっていいと思います。





目 次

序章 レッドブルとは何者か?
PARTⅠ  52億本への道

第1章 市場を創造する
 きっかけは日本のリポビタンD
 タイのエナジードリンクにほれ込む
 オーストリアに本拠を置く
 同級生と斬新なCMをつくる
 ハンガリーから世界への第一歩
 ライバルたちはまだ甘く見ていた
第2章 世界市場を制圧せよ
 レッドブル、アメリカへ
 世界の頂上に行く道
 レッドブル・コーラの失敗
 ミスが許されるのは一度だけ 
 まるで宗教?
第3章 「販売禁止」を逆手に取る
 飲みすぎると死亡する?
 砂糖たっぷりのエスプレッソ
 医者は警告する
第4章 男と男の握手に価値がある 
 契約書はいらない
 欧州生産にこだわる
 頭の痛いデポジット制に秘策で対応
 商標が命
第5章 銀行にだけは借金するな
 姿を現さない株主
 飲料ではなくエキサイティングな体験を売る
 儲けた金だけを投資する
第6章 すべてがマーケティングだ
 オリジナルだからこそ価値がある
 ポストモダンの"聖水"
 代理店に丸投げせずイベントを自社開催
第7章スポーツの一部になる
 アスリートは「家族」
 「新しいスポーツ」を育成する
 黄金の三分率
 スポーツを一方的に利用しない/ドーピング医師を雇う
PART II スポーツ・マーケティング

第8章 ファンに抵抗されてもサッカークラブを買収
 「伝統を破壊した」と抗議される
 監督のクビ切り問題
 トレーニング施設には金をかける
 ニューヨーク・レッドブルズ
 ドイツ・ブンデスリーガ参戦
 ブラジルとガーナに育成施設をつくる
第9章  F1王者になる
 ジャガーを飲み込んだブル
 スクーデリア・トロ・ロッソ
 ベッテルの快進撃
 ミスコンテスト?
 オーストリアのサーキットの復活
 ナスカー参入の失敗
 ラリーとオートバイにも進出
 若手ドライバーの育成
第10章 氷の上のブル
 レッドブル・ザルツブルグ
 ヨーロッパ制覇へ
 NHLチーム買収の失敗
第11章 メディア嫌いによるメディアへの進出
 取材対応の"アメとムチ"
 レッドブルの先進的なデジタルTV
 ローカル放送局の買収
 遅れに遅れたTV放送のリニューアル
 レッドブルの出版社
 オーストリアの生活雑誌
第12章 グルメ・ブランドの創設
 由緒正しい飲み物
 最高級フィンガーフード
 アフリカンテイストなカフェ
PART III  レッドブル帝国の正体

第13章 叩き上げの億万長者
 計算しづらい資産
 レッドブルグループの構成
第14章 オーストリアに喜んで税金を払う
 豊かな自然の中にある本社
 イベント開催スペースも自前
 飛行機のコレクション
 レッドブル・エアレース
 絶好調のF1
 世界各地でサッカーに参入
 メディア企業の買収
 自社内に広告代理店をつくる
 アフロカフェ
第15章 レッドブルのもう一つの顔
 マテシッツ個人のビジネス
 レストランの運営
 不動産ビジネス
 フェルテンドルフの飛行場
 建設会社のブル・バウ
 地域暖房ネットワーク
 すべてが成功プロジェクトではない
PART IV 創業者の横顔

第16章 創業者マテシッツの華麗なる人脈
 F1貴族の仲間たち
 サッカー界の「皇帝」
 政治家のつながり
 レッドブルを彩るアーティスト
 グルメ仲間たち
 マテシッツの右腕は誰?
第17章 ブルと呼ばれる男
 華やかなウィーンの街で学ぶ
 ブルの息子
 型破りだけど保守的な性格
 空飛ぶスポーツマン
 女性関係は派手だが…
 慈善家としての一面
終章 ブルのこれから


<関連サイト>

レッドブル・ジャパン 公式サイト

wikipedia の項目「レッドブル」には、「世界商品」としての開発事情についての解説がある

オーストリアに学ぶ「地方・中小企業主義」-「都会で大企業勤務」以外に広がる選択肢!(東洋経済新報オンライン、2014年12月8日)


<ブログ内関連記事>

「レッドブル」-タイが本家本元の 「ローカル製品」 が 「グローバル製品」 として生まれ変わった!
・・現在でもタイ側は51%を所有するパートナー

タイのあれこれ (26) タイ好きなら絶対に必携のサブカル写真集 Very Thai
・・タイ人が好きなスタミナドリンクという飲料カテゴリーについても一章とりあげられている。ちなみに、朝鮮人参のふるさとである韓国でもスタミナドリンク人気は高いのだが、本書には韓国の事情がまったく出てこないのが不思議


ローカリゼーション

書評 『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか-世界で売れる商品の異文化対応力-』(安西洋之、中林鉄太郎、日経BP社、2011)-日本製品とサービスを海外市場で売るために必要な考え方とは?
・・「ローカリゼーション」にかんする必読書

由紀さおり世界デビューをどう捉えるか?-「偶然」を活かしきった「意図せざる海外進出」の事例として・・日本語と音楽の関係について

プラクティカルな観点から日本語に敏感になる-藤田田(ふじた・でん)の「マクド」・「ナルド」を見よ!

ディズニーの新作アニメ映画 『アナと雪の女王』(2013)の「日本語吹き替え版」は「製品ローカリゼーション」の鑑(かがみ)!

書評 『ゲームのルールを変えろ-ネスレ日本トップが明かす新・日本的経営-』(高岡浩三、ダイヤモンド社、2013)-スイスを代表するグローバル企業ネスレを日本法人という「窓」から見た骨太の経営書


スポーツ

「近代スポーツ」からみた英国と英連邦-スポーツを広い文脈のなかで捉えてみよう!


オーストリア

書評 『知の巨人ドラッカー自伝』(ピーター・F.ドラッカー、牧野 洋訳・解説、日経ビジネス人文庫、2009 単行本初版 2005)-ドラッカー自身による「メイキング・オブ・知の巨人ドラッカー」
・・オーストリア出身でアメリカに移民して成功した有名人はドラッカーとアーノルド・シュワルツネガーの二人

書評 『向う岸からの世界史-一つの四八年革命史論-』(良知力、ちくま学芸文庫、1993 単行本初版 1978)-「社会史」研究における記念碑的名著
・・「ウィーンはゲルマン民族とスラヴ民族の接点という、地政学的な特徴をもった都市なのである。ゲルマン民族を頂点にいただきながら、ゲルマン民族とスラヴ民族が中層から下層をなす重層構造をもった都市である。これは現在のオーストリアでも変わらない」

(2014年8月21日 情報追加)




(2012年7月3日発売の拙著です)








Clip to Evernote 


ケン・マネジメントのウェブサイトは
http://kensatoken.com です。

ご意見・ご感想・ご質問は  ken@kensatoken.com   にどうぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。

禁無断転載!





end