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2013年10月1日火曜日

書評 『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(大宮冬洋、ぱる出版、2013)-小売業は店舗にすべてが集約されているからこそ・・・


『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(大宮冬洋、ぱる出版、2013)という本を読んでみました。最近、ネットではいろいろ叩かれていますが、ユニクロは内部からみるといったいどんな会社なのか関心があります。

ユニクロは消費者としてよく利用しますが、なかで働いたことがないわたしのような人間にとって、じっさいに店頭で働いていた経験をもとにした本書のようなノンフィクションはじつに読みであります。

著者は某有名国立大学を卒業後、フリースでブレークする前のユニクロ(=ファーストリテーリング)に新卒入社したものの7カ月で挫折して退職を余儀なくされたという体験をもっているフリーライター。

その著者が最初に配属された「ユニクロ154番店」、いまはなき「ユニクロ町田店」で勤務したときの同僚を10年後に訪ね歩くという形で聞き取りを行ったものが本書です。ごく身近な人間関係から全体像を導き出すというスタイルはなかなか面白い。

この本を読むと、正社員とパートやアルバイトといった非正規社員とでは働きがいと賃金以外の処遇に大きな違いがあることがわかります。

正社員としてやっていくにはかなりつらいものがあるものの、パートやアルバイトといった非正規社員として働くなら、うつ病になったりすることはないという事実。

最近のことですが、労働者にしめる非正規社員比率が4割に近いという報道がされましたが、ユニクロのような企業においては正社員として働くことの是非は、あくまでも働く本人が考えて決めるべきことだということを意味しているのかもしれません。

じっさいのところ、準社員という名のパートやアルバイトとして働く限り、過酷なプレッシャーのかかる店長になったり転勤させられることは皆無なわけですから、モノは考えようということでありましょう。


ユニクロで店長経験がなければその後のキャリアパスはない

正社員の場合、ユニクロでは店長を経験しなければその先の希望する職種にはつけないということです。

ユニクロのキャリア方針は、わたしにはアメリカ海兵隊に似ているような気もします。

海兵隊においてはブーツキャンプでの過酷な訓練というイニシエーション(=通過儀礼)を経たうえで、全員がライフルマンであることが徹底されます。そのうえで、歩兵や航空パイロット、広報やロジスティクスなどさまざまな職種に配属されていくことになります。全員がライフルマンである、というのが基本原則なわけです。

ただし、海兵隊においては、将校のキャリアと下士官以下のキャリアはまったく異なるので、兵隊からたたき上げで将校になるのはなかなか至難の業です。ユニクロの正社員キャリアパスは、むしろ徴兵制をしくイスラエルに近いかもしれません。

国民皆兵の国であるイスラエルでは、一部の例外を除いて、徴兵によって兵役期間満了まで勤め上げることが国民の義務でありますが、優秀な兵士のなかでこれはと目星をつけた者に、兵役満了後に軍に残って将校になる道を選択させる形で将校のリクルーティングを行っています。 つまりイスラエル国防軍においては、将校はすべて兵から上がってきた者だけなのです。

これはきわめて納得のいくキャリアパスといえうでしょう。現場を知っている人間がマネージャーになるという方式と同じです。

この論点については、アルバイトをちょっと長めの「インターンシップ期間」と捉えてみよう という記事に書いてありますのでご覧になっていただければ幸いです。

ユニクロの組織は本書によれば上意下達の軍隊式なので、その組織内キャリアにかんしても軍隊そのものであるともいえるでしょう。


正社員とパート・アルバイトが同じ現場で働くことの問題点

ただ、ユニクロがアメリカ海兵隊ともイスラエル国軍とも違うのは、正規と非正規の従業員が現場に混在していることです。非正規のなかにはパート、アルバイト、嘱託、派遣などさまざまな雇用形態が含まれます。

日本の航空会社においても事情は同じですね。ただし最近、全日空(ANA)では、客室乗務員(CA)は全員が正社員に変更になると報道されてました。ANAの動きにかんしては賛否両論があると思います。

最近のアメリカ軍では民間兵士会社に業務委託しているので、正規の兵士と民間軍事会社の兵士が混在しているので似た状況にあるのかもしれません。民間軍事会社の社員は市民であって軍人ではないので、軍人としての保護や補償はありません。つまり処遇体系の異なる兵士が混在していることになります。

サービス産業化がさらに進展し、非正規社員比率はさらに上がることが予想されています。労働は二極分化していくのは避けられない時代の流れなのだといってよいのかもしれません。

『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』を読んでいてわたしが気になるのは、いくら店長は「オーナー意識をもて!」と叱咤されても、正社員ですら自社株を一株も持っていないのであればムリがあるのではないかということです。コンビニにおいては、真の意味におけるオーナーとのフランチャイズ契約関係にあるのとは大きな違いです。

いっそのこと正社員として採用せず、店長候補はすべて業務委託という形にしたほうが、働く側にとっても経営側にとっても Win-Win でかつスッキリしていいのではと思うのですが・・・。いわゆるインディペンデント・コントラクター(=独立請負業者)という形態です。

そんなことを考えながら読みました。面白い本ですので一読をおすすめします。





目 次

プロローグ 居心地の良かった「ユニクロ154番店」の跡地を訪ねて
第1章 裏店長と呼ばれたAランクパートとフリースブーム以前入社の古参準社員
第2章 サッカー選手を目指すフリーターと元ギャル。アルバイトスタッフの意外な本音
第3章 熱血社員たちはなぜ3年でユニクロを辞めたのか
第4章 ユニクロ外資系金融マンとCSスタッフ賞受賞の美人現役スタッフ
第5章 元チーマーと元銀行員がなぜユニクロに? 謎だらけだった2人の過去
第6章 勤続16年「ユニクロが青春だった」元スーパースター店長との邂逅
エピローグ 地域で愛されるユニクロに生まれ変われ

著者プロフィール

大宮冬洋(おおみや とうよう)
1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(=ユニクロ)に就職。退職後、編集プロダクションを経て、2002年よりフリーライターに。『日経ビジネスアソシエ』、『プレジデント』、『きょうの料理ビギナーズ』、『dancyu』などで執筆。著書に、『30代未婚男』、『ダブルキャリア』(ともに共著/NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』(ぱる出版)がある。





<関連サイト>

ユニクロ社員が不幸になる”合理的な”理由 スタッフの足跡をたどって見えたもの(大宮冬洋、東洋経済オンライン 2013年3月28日)
・・「僕はユニクロ勤務時代にサービス残業などの理不尽さを強要されたことはない。ユニクロがいわゆる「ブラック企業」なのかは今でもよくわからない。ユニクロ社員の8割が不幸になってしまうのは、むしろ合理的すぎることに起因していると感じている」。

ユニクロ 疲弊する職場 [拡大版] サービス残業が常態化、うつ病の罹患率も高い(風間直樹 :東洋経済記者、2013年03月12日)

【特報】ユニクロ、パートとアルバイト1万6000人を正社員化 (日経ビジネスオンライン、2014年3月19日)
・・「今回の取り組みでは、子育てや介護といった多様な事情で、不規則な勤務時間でしか働けないような従業員に対しても正社員化の門戸を開き、多様な働き方を認めたままで待遇を正社員化する。・・(中略)・・パートやアルバイトから正規雇用される社員は、特定の店舗や地域に勤務地が限定される「R(リージョナル=地域)社員」と位置づけられる。さらに今後は、パートやアルバイトからR社員への移行だけではなく、R社員としての新卒、中途採用も進める予定だ」。 ユニクロも、もはや背に腹は代えられないということか。



<ブログ内関連記事>

アルバイトをちょっと長めの「インターンシップ期間」と捉えてみよう

『JAL崩壊-ある客室乗務員の告白-』(日本航空・グループ2010、文春新書、2010) は、「失敗学」の観点から「反面教師」として読むべき内容の本

書評 『ユニクロ帝国の光と影』(横田増生、文藝春秋社、2011)

書評 『民間軍事会社の内幕』(菅原 出、 ちくま文庫、2010)-近代世界の終焉と「傭兵」の復活について考える ①

むかし富士山八号目の山小屋で働いていた (2) 宿泊施設としての山小屋 & 登山客としての軍隊の関係
・・「兵隊レベルでは、自衛隊員のほうが米陸軍兵士よりも、忍耐力もあって強いのではないか、という印象が私には強い」、という印象を抱いた扶持さにゃ孫やでの勤労体験記。将校と兵士の違いは日米で共通

書評 『アップル、グーグル、マイクロソフトはなぜ、イスラエル企業を欲しがるのか?』(ダン・セノール & シャウル・シンゲル、宮本喜一訳、ダイヤモンド社、2012)-イノベーションが生み出される風土とは?

書評 『エリートの条件-世界の学校・教育最新事情-』(河添恵子、学研新書、2009)-世界の「エリート教育」について考えてみよう!
・・なぜ日本では「現場」は優秀だがエリートはダメなのか?

(2015年6月29日、2016年8月11日 情報追加)




(2012年7月3日発売の拙著です)





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