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2012年4月27日金曜日

書評 『会社で心を病むということ』(松崎一葉、新潮文庫、2010 単行本初版 2007)-社員のメンタルヘルス状態が改善すれば生産性も向上する。急がば回れ!

社員のメンタルヘルス状態が改善すれば生産性も向上する。「急がば回れ」のCSR実践論

現代日本の年間3万人を超える自殺者。その多くを占めるのが、うつ病に代表される精神疾患です。

うつ病は、会社で心を病んだ結果であることが多いのです。職場の人間関係に起因することが多い、といわれています。

本書は、読者自らが自分の精神的健康状態を保つための実践的アドバイスであり、また、とくに職場のマネジメントの立場にある中間管理職が読んで、率先してうつ病発生の予防と早期発見の環境づくりをすべきことを説いた本でもああります。

派遣切りなどでクローズアップされることの多い非正規労働だけでなく、残された正社員の肩にかかる過重労働にはもっと目を向けるべきでしょう。

「成果主義」が導入されたものの、成果主義の本来の意図とは異なり、たんなる労働強化の口実にしかなっていない現状を座視すべきではありません。

業績を上げるために従業員にかかる過剰な負荷が、かえって従業員の精神的な健康を阻害し、ひいては会社全体の生産性を下げることにつながっているという現実にこそ目を向けるべきなのです。

著者は、CSR(=企業の社会的責任)の観点に立つならば、ステークホルーダのなかでももっとも重要な従業員の健康こそ重視すべきだと説いています。

短期的な業績向上策は長続きしません。疲弊感だけが残るからです。持続性のあるサステイナブルな企業成長を期待したいのなら、従業員のメンタルヘルス状態を改善すべきなのです。いいかえれば、「やらされ感」のない、働きやすい職場づくりです。「急がば回れ」なのです。

本書は基本的に産業医を置くことが義務づけられている大企業の産業医の立場から書かれたものですが、大企業、中堅中小企業、事務所の違いなく、メンタルヘルスにかんする意識変革が必要であることを痛感します。

中小企業は、人間阻害的な要素は大企業に比べるとはるかに小さいが、それでも問題がないわけではないのです。

とくに経営者や管理者が読むべき本として、ビジネス書として位置づけてほしい一冊です。


<初出情報>

■bk1書評「社員のメンタルヘルス状態が改善すれば生産性も向上する。「急がば回れ」のCSR実践論」投稿掲載(2011年2月13日)
■amazon書評「社員のメンタルヘルス状態が改善すれば生産性も向上する。「急がば回れ」のCSR実践論」投稿掲載(2011年2月13日)






目 次

序章 会社で心を病む人たち
第1章 心のメカニズム
第2章 なぜ会社で心を病むのか
第3章 現実とのミスマッチ
第4章 精神科産業医の処方箋
第5章 心のホットライン
第6章 もう会社で心を病ませない

著者プロフィール


松崎一葉(まつざき・いちよう)
1960年生まれ。1985年筑波大学医学専門学群卒業。1989年筑波大学大学院博士課程修了。医学博士。筑波大学社会医学系准教授。また、日本産業衛生学会評議員、宇宙航空研究開発機構主任研究員、茨城労働局局医、東京都庁知事部局健康管理医、各企業の精神科産業医として、メンタルヘルス不全の治療および予防活動に取り組んでいる。専門は産業精神保健学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<書評への付記>

うつ病には2つのタイプがあるといわれています。従来型の抑鬱型と現代型のうつ病です。この本では、自殺を誘発する可能性も高い抑鬱型についてくわしく書かれています。

誤った成果主義による「やらされ感」が原因になっていることは、大いに傾聴すべきでしょう。

大企業のように常駐の産業医がいても、なかなか相談しにくいのが精神科や心療内科ですが、たとえ産業医がいなくても、自律的に対応できる体制と人材育成が必要です。

とくに、そうでなくても精神的な疾患を生みやすい海外展開している企業では不可欠な課題です。これは大企業でも同じことですね。

中小企業や事務所では大企業以上に人が財産。であればこそ、です。

短期的にはコストアップ要因になりますが、長い目でみたら社員の精神的な健康状態が改善すれば、自ずから生産性もあがるようになるのは自明の理です。発想の転換が必要なのです。

職場全体に、カウンセリングマインドを養成して、受容、傾聴、共感といったマインドセットを定着させたいものです。

また、仕事をつうじて達成感をもってもらうために、できるだけ自己裁量権を増やすような仕事の任せ方も必要でしょう。


「ビッグピクチャー・スモールサクセス」というコトバが本書には紹介されていますが、まさにそのおり。「大きな全体像を描いて、小さな成功体験」をひとつづつ積み上げていくこと。

こういう取り組みが、個々の従業員にも、マネージャーにも経営者にも求められるのです。







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2012年4月26日木曜日

書評 『マザー・テレサCEO-驚くべきリーダーシップの原則-』(ルーマ・ボース & ルー・ファウスト、近藤邦雄訳、集英社、2012)-ミッション・ビジョン・バリューが重要だ!

あたらしい修道会を立ち上げ、国際的な組織に育て上げたマザー・テレサのマネジメント手法とは?

マザー・テレサについては、あらためて説明するまでもないと思います。バルカン半島の小村に生まれ、インドのカルカッタ(コルコタ)で貧しい人たちのための奉仕活動に一生を捧げたカトリックの修道女です。

一方、マザー・テレサには、「貧しい人びとのなかのもっとも貧しい人びとに仕える」(to serve the poorest of the poor)というミッションを掲げた「神の愛の宣教者会」(ミッショナリー・オブ・チャリティー)を、カトリック教会の内部で新規に立ち上げ、国際的な組織に育て上げたという「企業内起業家としての側面」もあります。

それが本書のタイトルにもあるマザー・テレサCEO(最高執行責任者)ということが意味するものです。

マザー・テレサの一生は、ミッション遂行のためには万難を排して献身した人生であり、けっして平坦な道ではなかったのでした。

本書は、若き日にマザー・テレサのもとで奉仕活動を行った起業家の著者が、ビジネス上のメンターとともに書き上げた、リーダーシップのあり方の原則にかんするビジネス書です。

しかし、あたらしい事業を立ち上げ、国際的な組織に育て上げるという外面的な「成功」についてのみ語った内容ではありません。

組織のリーダーとして毎日のように直面するさまざまな課題といかに正面から向き合い、ひとつひとつ解決していったかについてのマザー・テレサ実践について、読者と一緒に考えようという姿勢に貫かれた内容になっています。

マザー・テレサのマネジメントは、著者たちによって「リーダーシップの八原則」としてまとめられています(目次を参照)。

その多くは、カトリックの修道女として生きてきたマザー・テレサならではのものですが、「原則2 天使に会うためなら悪魔とも取引しろ」、「原則4 疑うことを恐れるな」のように、あのマザー・テレサがそうだったのか(!)と驚くような原則も含まれています。いずれも起業家や経営リーダーならかならずぶつかる難問の数々。そこで語られるのはミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の重要性です。

マザー・テレサの八原則について、通り一遍の教科書的な理解に終わらせないためにも、ぜひ実際に読んで、自分のアタマで考えてみることをすすめたいと思います。できればディスカッションの材料として、一緒に考えてみることもいいでしょう。そのために必要なのは、マザー・テレサになったつもりでイマジネーションを働かせてみることです。

企業経営にかかわっているリーダーはもちろん、ありとあらゆる組織のリーダーにはぜひ読んでほしい本として推薦します。


<初出情報>

■bk1書評「あたらしい修道会を立ち上げ、国際的な組織に育て上げたマザー・テレサのマネジメント手法とは?」投稿掲載(2012年4月25日)
■amazon書評「あたらしい修道会を立ち上げ、国際的な組織に育て上げたマザー・テレサのマネジメント手法とは?」投稿掲載(2012年4月25日)





目 次


序章 マザー・テレサの原則
マザー・テレサの生涯
第1章 簡潔なビジョンを力強く伝えろ
第2章 天使に会うためなら悪魔とも取引しろ
第3章 がまん強くチャンスを待て
第4章 疑うことを恐れるな
第5章 規律を楽しめ
第6章 相手が理解できる言葉でコミュニケーションしろ
第7章 底辺にも目配りしろ
第8章 沈黙の力を使え
おわりに あなたが聖人になる必要はない

著者プロフィール

ルーマ・ボース(Ruma Bose)
起業家、投資家、アドバイザー。『マザー・テレサCEO』出版時は、ホメオパシー関連商品やビタミ
ン剤を販売するスプレーオロジー社の社長兼共同CEO。1992~93年、インドのカルカッタ(現コルカタ)で「神の愛の宣教者会」のボランティアとして、マザー・テレサと奉仕活動を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

ルー・ファウスト(Lou Faust)
実業界で30年以上の経験をもつビジネスマン、アドバイザー。そのうち10年をソロモン・ブラザーズに勤務し、ウォール街や東京で過ごす。マネージング・ディレクターなどを務めた。『マザー・テレサCEO』出版時はエッジ・キャピタル・パートナーズLLCの共同創業者、共同経営者。大きく成長しようとする企業に経営戦略のアドバイスを行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<原書タイトル>

Mother Teresa, CEO  Unexpected Principles for Practical Leadership, 2011

原書には索引(インデックス)がついている。最初から原書で読んだほうがいいかもしれない。ただし、日本語版よりは値段が高いが・・




<書評への付記>

「汚く稼いで綺麗に使え!」。このフレーズは、ビジネス書作家・神田正典の本にはよく引用されているが、じっさいに日本に宣教で来ていたカトリック修道会の司祭のコトバである。

しかし、この考えはきわめて重要だ。

マザー・テレサの場合は、稼いだのではなく寄付についてだが、「かならずしもキレイではないカネ」も受け入れたという。ただし、汚いカネを美名に変換する「売名行為」というロンダリングに使用されないように、見返りはいっさい拒否したという。

ミッションにブレがなければ、「悪魔と取引」することもいとわないという姿勢、これはマザーテレサに限らず、カトリック教会の長い歴史のなかで培われた智恵であるといってよいかもしれない。

このようなモラル・ジレンマは、まさに「ハーバー白熱教室」のサンデル教授によるディスカッション・テーマをほうふつとさせるが、マザー・テレサの場合もまた同様の問題に直面していたということだ。だが、これをクリアしたのは彼女一人の決断ではないと思う。伝統のチカラもあずかっているはずだ。

マザー・テレサが立ち上げた「神の愛の宣教会」(Missionary Of Charity)は、カトリック教会内のあたらしい修道会である。だから「企業内起業」(イントラプルナーシップ)といってよいのである。始まりはベンチャーであったのだ。この件については、ブログに書いた記事「アッシジのフランチェスコ (4) マザーテレサとインド」を参照していただきたい。マザー・テレサの生涯は映画化されているので、それを見るのがいちばんだろう。

なお、序文を寄せているビジネス書作家・本田直之氏も、訳文のなかでも、「マネージメント」となっているが、これはいただけない。動詞は「マネージ」と伸ばしてもいいが、名詞になったら「マネジメント」である。

間延びしていたマネージメントではなく、アクセントは文頭の「マ」に置いたマネジメントである。原則の5にもあるように、規律あるきびきびした姿勢こそ、修道院でしつけられたマザー・テレサの生活習慣に基づいた教えである。くれぐれも間違いなきよう!

著者たちがまとめた「マザー・テレサの八原則」は以下のとおりである。

1. 簡潔なビジョンを力強く伝えろ(Dream it simple, say it strong)

2. 天使に会うためなら悪魔とも取引しろ(To get to the Angels, deal with the Devil)

3. がまん強くチャンスを待て(Wait ! Then pick your moment)

4. 疑うことを恐れるな(Embrace the power of doubt)

5. 規律を楽しめ(Discover the joy of discipline)

6. 相手が理解できる言葉でコミュニケーションしろ(Communicate in a language people understand)

7. 底辺にも目配りしろ(Pay attention to the janitor)

8. 沈黙の力を使え(Use the power of silence)

*Janitor とは門番という意味。お掃除のおばさんや用務員さんなども含まれる。



<ブログ内関連記事>

アッシジのフランチェスコ (4) マザーテレサとインド

クレド(Credo)とは

「祈り、かつ働け」(ora et labora)

書評 『修道院の断食-あなたの人生を豊かにする神秘の7日間-』(ベルンハルト・ミュラー著、ペーター・ゼーヴァルト編、島田道子訳、創元社、2011)

映画 『シスタースマイル ドミニクの歌』 Soeur Sourire を見てきた

書評 『バチカン株式会社-金融市場を動かす神の汚れた手-』(ジャンルイージ・ヌッツィ、竹下・ルッジェリ アンナ監訳、花本知子/鈴木真由美訳、柏書房、2010)






(2012年7月3日発売の拙著です)






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2012年4月24日火曜日

書評 『思いが伝わる、心が動くスピーチの教科書-感動をつくる7つのプロセス-』(佐々木繁範、ダイヤモンド社、2012)-よいスピーチは事前の準備がカギ!


実践的なスピーチの教科書。よいスピーチは事前の準備がカギである!

『スピーチの教科書』、ずばり直球勝負のタイトル。

内容はまさに「スピーチの教科書」、定本として長く使われるでしょう。

オーソドックスな構成でありながら、取り上げられたスピーチの事例も、スティーブ・ジョブズの卒業スピーチと『ハリー・ポッター』の作者ローリングの卒業スピーチ、そしてブータン国王が日本の国会で行ったスピーチなど興味深い。たいへん読みやすく、すぐ実践につかえる内容のビジネス書になっています。

福澤諭吉が『学問のすゝめ』のなかで「スピイチ」あるいは「演説」としてスピーチを日本に紹介して以来、すでに百数十年がたっていますが、スピーチは日本人にとってはまだまだ難しい課題であるようです。

ビジネスの世界ではプレゼンの重要性について語られることは多いのですが、リーダーとして行わねばならないのはスピーチのほうがはるかに多いのではないでしょうか?

スピーチといっても組織のなかで行うものもあれば、組織の外で行うものもあります。3分程度のごく短いものもあれば、90分近くの長いものもあります。著者はソニーの創業者盛田昭夫氏や出井前会長の下でスピーチライターをしていたプロフェッショナルです。

なによりも、本書じたいがスピーチの構造に基づいて作製されています。それは、オープニング(導入)、ボディ(本体)、クロージング(締め)の三段階構造のこと。

これまでもスピーチのオープニングについては「つかみ」の重要性として語られることも多かったのですが、重要なのは、なんといても本体としてのボディ。このボディをいかに構築し、聴衆に共感をもって聞いてもらうかがスピーチのカギであり、そのボディを構成し、原稿として書き上げるための方法論がくわしく解説されています。

クロージングが重要なのは営業活動でも同じですが、聞いたあとも余韻として残るスピーチは「締め」が重要ですね。本書でも徹底分析されていますが、ジョブズのスタンフォード大学の卒業式スピーチで有名になった「Stay hungry, stay foolish !」(ハングリーであれ、バカであれ!)という締めのフレーズ。これは、ジョブズ自身が考えたオリジナルではないのにかかわらず、すでにジョブズの遺訓として長く語り伝えられていくことでしょう。

オープニング・ボディ・クロージングというスピーチの三段階構造は、スピーチにかぎらず、まとまった内容の話をしたり書いたりする際にも重要です。ちょっとした文章を書いたり、ブログの文章を書く際にも応用できるものです。日本の国語教育で強調されてきた起承転結はこのい際、アタマのなかから完全に消し去ってしまいましょう。ビジネスのスピーチには起承転結は不要です。「転」抜きの起承結でよいのです。

情報収集や知識を獲得するインプットはもちろん大事ですが、ビジネスパーソンには、なによりも書いたりしゃべったりするアウトプットが重要です。そして、しゃべるためには論理的に書くことが大事だという、きわめてオーソドックスでかつ真っ当な主張に基づいた「教科書」になっています。

ビジネスパーソンに限らず、ぜひテキストとしてつかってほしい一冊として推奨します。


<初出情報>

■bk1書評「実践的なスピーチの教科書。よいスピーチは事前の準備がカギである!」投稿掲載(2012年4月23日)
■amazon書評「実践的なスピーチの教科書。よいスピーチは事前の準備がカギである!」投稿掲載(2012年4月23日)





目 次

プロローグ スティーブ・ジョブズのスピーチは、なぜ人々の心を打つのか
Part 1.  スピーチの核をつくる
-1章 相手を知る-どんな場で、聴衆は何を期待しているか
-2章 メッセージを絞る-最も伝えたいことを明確にする
Part 2. 話を効果的に組み立てる
-3章 全体構成とボディ-伝わりやすい構造、順番を考える
-4章 オープニング-導入部で聴衆の注意を引きつける
-5章 クロージング-記憶に残る終わりかた
Part 3.  原稿づくり、リハーサル、そして本番!
-1章 リハーサル-原稿づくりから前日の準備まで
デリバリー-壇上での立ち振る舞いから質疑応答まで)
エピローグ スピーチライターの仕事

著者プロフィール

佐々木繁範(ささき・しげのり)

1963年福岡県北九州市生まれ。1987年に同志社大学経済学部を卒業後、日本興業銀行に入行。1990年にソニー株式会社に入社。盛田昭夫会長の直属スタッフとして企業外交を補佐、その間にスピーチ・ライティングを学ぶ。1995年から97年までハーバード・ケネディ・スクールに留学、公共経営学修士号を取得。帰国後、2001年まで出井伸之社長の戦略スタッフ兼スピーチ・ライターを務める。ソニーでは計100本以上のスピーチ・サポートを手がけるとともに、IT戦略会議の議長補佐として、IT国家戦略の策定にも携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<書評への付記>

スピーチが難しいのは、聞く側からみれば耳から入る話はシークエンシャルであることだ。シークエンシャルとは、時間的に連続しており、テープのように巻き戻しができない不可逆的な構造をもっているということである。

もちろん、スピーチの最中で、聴衆(オーディエンス)の反応をみながら軌道修正することはあるので、まったくインタラクティブではないとは言い切れない。しかし、基本はボディの構成と内容がしっかりと構築されていないと、軌道修正やアドリブは難しいということである。テレビのお笑い番組も、じつは放送台本が作製されて、綿密に構成されているのと同じである。

本書でとくに強調されているのが、スピーチは入念に準備せよという点である。スピーチ原稿をフルテキストまで書くことが望ましいとある。自分で苦しみながら考えて書いた原稿があれば、おのずとアタマのなかに入っているので本番では原稿に頼らずにしゃべることができるし、準備した原稿はいざというときに頼りになるだけでなく、精神的にもお守りにもなるというのは大いに納得だ。

そういう意味で、本書はスピーチだけでなく、文章を書く際にも役にたつ本だと思う次第。

お笑いのたとえではないが、「つかみ」と「落ち」は不可欠。そしてもちろん話の中身(ボディ)は言うまでもなく重要!

なお、本書の著者・佐々木繁範さんとは、出版後に一度お会いして、わたしとは同じ世代で、同じような経歴と価値観の持ち主であることを確認させていただきました。


<関連サイト>

【書籍拝見】スティーブ・ジョブズのスピーチは、なぜ人々の心を打つのか 『思いが伝わる、心が動く スピーチの教科書』第1回 (ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー 2013年12月25日)
『思いが伝わる、心が動く スピーチの教科書』第2回 (2013年12月26日)
『思いが伝わる、心が動く スピーチの教科書』第3回 (2013年12月27日)


 「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」 (講談社)2013年11月号
http://courrier.jp/contents/courrier108.html

佐々木繁範氏が、2020年のオリンピック招致における高円宮妃久子さまのスピーチについて専門家の立場から解説しているので、目を通していただければ幸いだ。書評 『思いが伝わる、心が動くスピーチの教科書-感動をつくる7つのプロセス-』(佐々木繁範、ダイヤモンド社、2012)-よいスピーチは事前の準備がカギ! も参照。



<ブログ内関連記事>

書評 『私が「白熱教室」で学んだこと-ボーディングスクールからハーバード・ビジネススクールまで-』(石角友愛、阪急コミュニケーションズ、2012)-「ハウツー」よりも「自分で考えるチカラ」こそ重要だ!

福澤諭吉の『学問のすゝめ』は、いまから140年前に出版された「自己啓発書」の大ベストセラーだ!

書評 『小泉進次郎の話す力』(佐藤綾子、幻冬舎、2010)




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2012年4月19日木曜日

「麹町ワールドスタジオ 原麻里子のグローバルビレッジ」で映画 『マーガレット・サッチャー』 を題材に英国とミャンマーについての話をしました(2012年4月18日放送)


昨夜(4月18日)、Ustream(ユーストリーム)によるインターネットの生放送 「麹町ワールドスタジオ 原麻里子のグローバルヴィレッジ」に出演しました。出演は二回目です。

番組は、シリーズ「オリンピックイヤーにイギリス通になろう!」の第2回 映画 『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』 。主演のメリル・ストリープがアカデミー主演女優賞を受賞した映画について、さまざまな側面から語り合う内容になっています。

出席者は、番組の主催者で原麻里子さん、わたしのほか、千葉大学、立教大学英語講師で企業内研修の英語講師 Tish Aoki さんの三人です。

英国は日本とおなじ狭い島国ですが、かつては「日が沈むところがない」といわれた大英帝国でもありました。その狭い英国でも、地域や階級で英語はかなり違うという事実についても触れています。サッチャーの英語についても、階級とのからみで解説されます。

また、わたしが冒頭で、ミャンマーについて、かつて英国の植民地だったビルマ(=ミャンマー)のからみで話をしています。ミャンマーについて、新聞やニュース報道とは異なる背景知識を知ることができるかと思います。

45分間が短く感じられる濃い内容の番組になっていますので、昨夜の生放送をお見逃しの方は、録画映像がアップされていますので、お時間のあるときにご試聴してみてください。 http://www.ustream.tv/recorded/21938422



<関連情報>

【ミャンマー情報】

“閉ざされた国”はどこへ ( NHK クローズアップ現代)  
・・4月2日に放送された内容の全文と動画(6分)。ニュース報道では見えないミャンマーがわかる内容。見落とした人はぜひ!

ミャンマーで大人気!日本の中古車(日経スペシャル 沸騰現場の経済学)
・・右側通行のミャンマーですが、日本の中古車人気はありがたいことです。カンボジアみたいに韓国車があふれかえるようにだけはなってほしくないものです。日本人の勝手な願望ですが... 



<ブログ内関連記事>

「ミャンマー再遊記」(2009年6月) 総目次
「三度目のミャンマー、三度目の正直」 総目次 および ミャンマー関連の参考文献案内
・・わたしがブログに書いた、タイ王国にかんする記事すべてについてのリンク集になっています

「ビジネスマンが語るタイ王国のいま」というタイトルで「麹町ワールドスタジオ 原麻里子のグローバルビレッジ」で話をしました(2012年2月15日生放送)





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2012年4月5日木曜日

書評 『模倣の経営学-偉大なる会社はマネから生まれる-』(井上達彦、日経BP社、2012)-「学ぶとは真似ぶなり」とは、個人でも会社でも同じこと


「学ぶとは真似ぶなり」とは、個人でも会社でも同じこと。模倣するための作法とは?

本書は、すぐれた会社はすぐれた模倣を行っていることについて書かれた一般向けの経営書です。

クロネコヤマト、スターバックスとドトールコーヒー、ジョンソン&ジョンソン、グラミン銀行などの具体的な事例をつかいながら、すぐれた会社が、何をどう模倣しているのか、あるいは反面教師として経営戦略をつくりあげたかを分析したものです。

模倣というと上品な響きだが、英語でいえばイミテーション、本質的には真似(まね)と同じです。

日本語では「学(まな)ぶとは真似(まね)ぶなり」という表現があるように、「模倣すなわち学習」のことです。

子どもが大人を真似るように、何事もお手本となるモデルがなければ、独自性も創造性もあったものではありません。いや、真似して自分のあったものを取捨選択して身につけることじたいが、じつはきわめてクリエイティブな行為なのです。

模倣は基本的には個人レベルで行われるものであるが、会社レベルでも行われます。

もちろん、会社を動かしているのは経営者や個々の従業員である以上、模倣のプロセスはそれほど簡単ではありません。本書で行われているのは、基本的には経営戦略をつくって実行させる立場にある経営者レベルのものです。著者は、本書において、経営者がみずから書いた本を材料にして事例分析を行っています。

本書は経営書ではありますが、経営者が書いたビジネス書などを読む際のガイドにもなっています。経営者が書いた回想録や経営書を読むことじたい、じつはビジネスパーソンにとっては、ある種のすぐれた模倣となるべきなのです。読者は、自分に必要なもの本から読み取って模倣するための手引としても活用すべきでしょう。

ただし、実務家である経営者や経営コンサルタントとは違うなと思う記述もすくなくありません。分析して見せるまではいいのですが、ではどう取り組むかまではあまり書かれていないためです。その点はあまり期待せず、割り引いて読むことをすすめたいと思います。

マネジメント専門書を読むのはハードルが高いと、ためらっている若手ビジネスパーソンにはぜひ手にとって通読してみるといいと思います。


<初出情報>

■bk1書評「「学ぶとは真似ぶなり」とは、個人でも会社でも同じこと。模倣するための作法とは?」投稿掲載(2012年4月4日)
■amazon書評「「学ぶとは真似ぶなり」とは、個人でも会社でも同じこと。模倣するための作法とは?」投稿掲載(2012年4月4日)

*再録にあたって一部加筆修正した




目 次

まえがき 模倣のパラドクス
第1章 「天才のなぞかけ」-メタファーとイノベーション
第2章 「インドの露天商」-模倣すべき本質をモデリングする
第3章 「クロネコの革命」-4つの要素と5つのステップ
第4章 「2つのカフェ」-模倣の創造性
第5章 「4人の教師」-誰をどのように模倣するのか
第6章 「守破離」-手本と現実のギャップを越える
第7章 「わな」-模倣できそうで模倣できない会社
第8章 「反転」-逆発想のモデリング
第9章 「作法」-倣い方を倣う
あとがき 経営書を「消費財」で終わらせないために

著者プロフィール

井上達彦(いのうえ・たつひこ)

早稲田大学商学学術院教授。1997年神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了、博士(経営学)。広島大学社会人大学院マネジメント専攻助教授、早稲田大学商学部助教授(大学院商学研究科夜間MBAコース兼務)などを経て、2008年より現職。2011年9月より独立行政法人経済産業研究所(RIETI)ファカルティフェロー、2012年4月よりペンシルベニア大学ウォートンスクール・シニア・リサーチフェローを兼務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの


<書評への付記>

お手本の模倣(=真似)はすべての出発点

社会人になる前のことですが、大学の卒論を書く際に言われたことをいまも思い出します。

ゼロからオリジナルな論文など書けるわけがないので、自分が設定したテーマにもっとも適合した論文を探し出してきて、それを徹底的に読みむこ真似ること。そのうえで、卒論を書き始めてみるように、と。

すべてはお手本を真似るということから始まるのです。真似するのです。

著者も一章をさいて説明していますが、日本の武道や芸事には、「守破離」という「型」を身につけるためのモデルが古くから確立しています。まずは師匠を徹底的に真似てから、あえてその教えを破り、最終的には独り立ちして自分の型をつくりあげるというモデルです。

本書で面白いと思ったのは、西洋の弁証法モデルもまた「正反合」と三段階で物事を説明していること。「守破離」よりもアンチテーゼ的な要素が濃いですが、構造としてはよく似ています。

著者のいう「正転模倣」が「守破離」であれば、「反転模倣」は「正反合」に対応しています。

著者は、遠いところからポジティブな模倣をすることを「正転模倣」近いところから反面教師として模倣することを「反転模倣」と、聞き慣れないコトバをつかって説明していますが、意味したことは理解できる。「反面教師」とは「人の振り見て我が振り直せ」ということです。

なにごとも自分で体験できればそれに越したことはありませんが、じっさいには時間の関係からそれは不可能です。実体験からの学びを「経験学習」といいますが、「代理学習」(観察学習、間接経験学習)もまた必要なのはそのためです。


さらに必要なのは「組織変革」の視点

ひじょうに面白いポイントから書かれていますが、組織というものは経営者の意向に従って動くものだという単純なモデルに基づいているような印象を受けます。

経営者は会社を自分の考える方向に引っ張っていくことができますが、じっさいに組織内で起こっていることは、それほど単純ではありません。

じっさいは、それぞれべつの思惑をもつ個人が、同じ方向性(=経営戦略)というワクのなかで、一人一人のメンバーの行動が、複雑系のなかで交差しながら、前進したり後退しながら前に進んでいるというのが会社組織の実態です。

模倣というのはまず何といっても個人レベルの問題であり、個人レベルの模倣がヨコ展開や反面教師をつうじて拡散、伝播していくという視点を忘れてはいけません。

一人の人間の脳内で起こっているプロセスと、複数の人間のあいだで起こるプロセスが違うことについて、深く考えておかねばならないのです。これは、経営者がおうおうにして間違いやすいポイントです。

学者の分析は分析どまりでプラクティカルではないという感想をもつのは、そういう理由です。とはいっっても、学者の役割を否定しているわけではありません。要は、学者もハサミも使いようだ、ということです。



<ブログ内関連記事>

書評 『プロフェッショナルを演じる仕事術』(若林計志、PHPビジネス新書、2011)-「学ぶとは真似ぶなり」という先人の知恵を現代風にアレンジした本・・「守破離」のポイントは同じ

書評 『絶対の自信をつくる 3分間トレーニング』(松尾昭仁、あさ出版、2011)・・カタチから入る誰でもできる方法について書かれたもの。この本は初級者向け

What if ~ ? から始まる論理的思考の「型」を身につけ、そして自分なりの「型」をつくること-『慧眼-問題を解決する思考-』(大前研一、ビジネスブレークスルー出版、2010)
・・「守破離」についてわたしのコメントが書いてある。あわせてお読みいただきたい

「学(まな)ぶとは真似(まね)ぶなり」-ノラネコ母子に学ぶ「学び」の本質について

カラダで覚えるということ-「型」の習得は創造プロセスの第一フェーズである

「三日・三月・三年」(みっか・みつき・さんねん)

「地頭」(ぢあたま)について考える (1) 「地頭が良い」とはどういうことか?

「地頭」(ぢあたま)について考える (2) 「地頭の良さ」は勉強では鍛えられない

書評 『ヒクソン・グレイシー 無敗の法則』(ヒクソン・グレイシー、ダイヤモンド社、2010)-「地頭」(ぢあたま)の良さは「自分」を強く意識することから生まれてくる

世の中には「雑学」なんて存在しない!-「雑学」の重要性について逆説的に考えてみる
・・本書でも取り上げられている藤田田(ふじた・でん)について






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2012年4月1日日曜日

株式会社ケン・マネジメント 三年目を迎えます-「三年目の正直!」


おはようございます。

新年度ですね、新学期ですね。

本日4月1日より、株式会社ケン・マネジメントは三年目を迎えます。
「三年目の正直!」といったところでしょうか。

この写真のつぼみの桜が、とつぜんはじけるように、
きょうから突然変異で人も会社も変わるわけではありませんが、
気持ちだけでも新しく、「日々是新たなり」の精神で取り組んで参りたいと思います。

今年度もよろしくお願いします。



<ブログ内関連記事>

株式会社ケン・マネジメント 本日2010年4月12日、新規開業いたします。

【ドキュメント会社設立】日本で会社をつくる、ということ

桜咲く! 会社登記完了!






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