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2011年9月14日水曜日

書評 『日本でいちばん大切にしたい会社』、『日本でいちばん大切にしたい会社2』(坂本光司、あさ出版、2008、2010)-取り上げられた中小企業はみなすばらいのだが・・・


 2冊の累計で50万部売れてレビューも非常に数多く書かれて絶讃されている本を、あえてここで取り上げるのは、中小企業の世界にどっぷり浸かってきた私としても感想を述べておきたいと思ったからです。

 著者は、法政大学大学院政策創造研究科教授、専門は中小企業経営論、地域経済論、福祉産業論とのこと。この『日本でいちばん大切にしたい会社』で全国的に知名度が向上した経営学者です。

 たしかに、この2冊(・・まだ「3」は出版されていませんが、おそらくシリーズ化されることでしょう)に取り上げられた会社はみなすばらしい。とくに正編は、知らない会社ばかりなので新鮮な印象を受けました。

 とくに印象に残った会社は、「正編」で取り上げられている日本理化学工業株式会社、中村ブレイス株式会社、杉山フルーツの3社です。この3社は文句なしにすばらしい。

 だが、「続編」の「2」は、中小企業の世界にいると、耳にすることは少なからずある会社であり、「正編」ほど印象は強くなかったことは正直に告白しておきます。

 「2」に収録されている会社は、とくに大切にしなくても、十分に自社のチカラで生き抜いていけるだけの実力をもった会社ばかりではないでしょうか?


取り上げられた中小企業はみなすばらいが、著者の見解には必ずしも賛同しない点がある

 知られざるすばらしい会社を取り上げた本書はすばらしい本だと思いますが、著者の見解に必ずしも賛同しない点が一点あります。

 それは企業のステイクホールダーにかんする議論です。著者はこのように書いています。正編第1章「会社は誰のために」です。

1. 社員とその家族を幸せにする
2. 外注先・下請企業の社員を幸せにする
3. 顧客を幸せにする
4. 地域社会を幸せにし、活性化させる
5. 自然に生まれる株主の幸せ

 著者は、「五人に対する使命と責任」として、この順番に重要だとしています。

 私も、「1. 社員とその家族を幸せにする」は重要だと考えていますが、企業存続の基本は「3. 顧客を幸せにする」が筆頭にくるべきだと考えています。

 著者はこの考えには反対のようですが、企業の存在意義というものは企業内部の人間が決めるものではなく、顧客が決めるものだからです。社会に受け入れられてこそ存在意義がある。ドラッカーではあえりませんが、「マーケティングとイノベーションこそ企業存立の要」です。

 「1. 社員とその家族を幸せにする」は、家族を食わせるために働いていると似た印象を受けないではありません。もちろん縁あって入社してくれた仲間を大事にするのは、人間として当然のことです。その仲間の家族を大事にするのも当然です。初発の動機としては問題ありません。

 しかし、この「好循環」が成り立つのは、あくまでも業績が安定しているからこそなのです。いったん「悪循環」にはまると、たとえすばらしい会社であっても、企業そのものの存立があやうくなってしまいます。

 これが企業経営の恐いところですね。顧客からの支持がなくなったら、たとえ、すばらしい理念をもった会社であっても、倒産してしまうこともよくあるのです。

 もちろん、「顧客中心」を全面に打ち出しても、実態は顧客に奉仕して消耗せよという会社も世の中には少なくありません。それではまったくもって本末転倒ですね。そういう会社は、いわゆるブラック企業と見なされても仕方ないでしょう。

 順番なんかどっちでもいいではないかという意見もあるでしょうが、ステークホルダーの議論は、かなり本質論にかかわるものです。

 わたしは、著者のいう「五人に対する使命と責任」については、いずれも大事だと思いながらも、順番付けについては賛成ではないのは以上の理由によります。

 結論をいえば、著者のいう「五人に対する使命と責任」についてはいずれも大事なのです。あえていえば「顧客」だというのが、わたしの立場です。

 著者の「価値観」は理解できますが、あくまでも中小企業を外部から観察している人だなあという印象はぬぐえません。中小企業のなかに入ったことはないだろうな、と。ややキレイごとな面があるのではないでしょうか。



本書で紹介された中小企業はみな「インバウンド・マーケティング」を実現している

 この2冊を読んで私が思ったのは、結局のところ、この2冊に紹介されたすべての会社が、意図したかどうかは別にして「インバウンド・マーケティング」が実現しているという点です。

 売り込むのではなく、買いに来てくれるように仕向けているのが「インバウンド・マーケティング」。プッシュ・セールスではなく、広告宣伝費をかけないマーケティングですね。ただし「2」に収録されているアールエフ社は、女優の高島礼子を起用した派手な広告宣伝を行っているのは知る人は知っているでしょう。

 「インバウンド・マーケティング」が実現しているのは、消費者と直接かかわりをもっっていること、自社の価値観を受け入れてくれる顧客の絶対的な支持を得ている「顧客中心企業」であるということであると要約するのがいいかもしれません。

 B2B企業だとなかなかこうはいきません。法人相手のビジネスだとその会社が最終顧客ではないからです。とくに、下請企業だとますますむずかしい。

 たとえば、著者による「量産志向をやめて下請から脱しろ」という主張には全面的に賛成です。とはいっても、下請で生きてきた会社が下請から脱するのはきわめて難しいのが実際です。下請は利益面では厳しいが、キャッシュフロー面ではある意味では安定が確保されるからです。


これからはソーシャル企業の方向に進んでいく

 私はこれからの企業経営はソーシャル企業の方向に進み、一方では社会問題を解決する志の高い人たちがソーシャル企業を目指す方向に、両者が収斂(しゅうれん)コンバージョンしていくと考えていますが、マネジメントという視点を欠いては、成り立たないことは言うまでもありません。

 本書に紹介された中小企業は、ソーシャル企業を目指してわけではないが、結果としてソーシャル企業になっていた、ということもいえるかもしれません。

 おそらく読者の多くは、この本で紹介されているような、「従業員の楽園のような会社で働けたらなあ、それにくらべて自分が働いている会社ときたら・・・」という「隣の芝生」的な羨望もまじってベストセラーとなったのではないかなと思われます。

 ただし、あくまでも規模の小さな会社でのみ成り立つこと、手の届く範囲、見える範囲に全従業員がいなかえれば成立が難しいことは指摘しておかねばなりません。

 シビアな眼で見つめることも企業経営には必要だと言っておきたいので、あえてこのような内容の記事を書いてみました。


『日本でいちばん大切にしたい会社』

目 次

はじめに
第1部 会社は誰のために?
 -「わかっていない」経営者が増えている!
 -会社経営とは「五人に対する使命と責任」を果たすための活動
 -業績ではなく継続する会社をめざして
 -業績や成長は継続するための手段にすぎない
 -社員は利益だけを求めているわけではない
 -「多くの人を満足させる」こと。それが会社の使命
 -経営がうまくいかない理由は内側にある
 -中小企業にしかできないことがある
 -日本で大切にしたい会社を増やそう
 -続けていくことの大切さ
第2部 日本でいちばん大切にしたい会社たち
 1. 障害者の方々がほめられ、役立ち、必要とされる場をつくりたい
   ・・日本理化学工業株式会社
 Column 重度の障害をもつ彼女だからこそ、わが社が採用しなければ
   ・・株式会社ファンケルスマイル
 2. 「社員の幸せのための経営」「戦わない経営」を貫き、四八年間増収増益
・・伊那食品工業株式会社
 Column 75年間連続増収企業は、「社員がハッピーなら会社もハッピー」
・・ジョンソン・アンド・ジョンソン株式会社
    三年間入院した社員にずっと給料・ボーナスを払い続けた
・・樹研工業株式会社
 3. 「人を支える」会社には、日本中から社員が集まり、世界中からお客様が訪ねてくる
・・中村ブレイス株式会社
 Column  難病になった娘のためにリフト付車椅子を開発
・・キシ・エンジニアリング株式会社
    骨粗しょう症の高齢者のために人工関節を開発
・・株式会社ホリックス
    「子ども」という弱者の視点で「飲むカメラ」を開発
・・株式会社アールエフ
 4. 地域に生き、人と人、心と心を結ぶ経営を貫いていく
・・株式会社柳月
 Column  心のやさしい子どもたちを育てるために、50年間詩集を発行
・・柏屋
 5.「あなたのお客でほんとうによかった」と言われる、光り輝く果物店
・・杉山フルーツ
 Column  「とうてい大切にできない会社」と「心から大切にしたい会社」 

おわりに




『日本でいちばん大切にしたい会社2』

目 次

はじめに
プロローグ 会社がほんとうに大事にしなければならないこと
 -5人に対する使命と責任を果たす-それが企業経営
 -会社にとって「顧客」より大切なもの
   ・社員と社員の家族からの千羽鶴
   ・母国、日本に帰りたくなりました
   ・訪問調査した6,300社から改めて抽出
大切にしたい会社1 株式会社富士メガネ(北海道)
 「困っている人を助けたい」――世界の難民や
  中国残留孤児に「視力」を贈る感動のメガネ店
大切にしたい会社2 医療法人鉄蕉会亀田総合病院(千葉県)
  「もう一度入院したい」と患者が言う病院のモットーは
  「Always say YES!」
大切にしたい会社3 株式会社埼玉種畜牧場「サイボクハム」(埼玉県)
  「日本人の食料不足をなんとかしよう」-使命感に
   燃えて牧場を経営、「農業のディズニーランド」を実現する
大切にしたい会社4 株式会社アールエフ(長野県)
  「小さな命をもっと救いたい」-世界が驚くカプセル
   内視鏡を開発。「人間の幸せ」を追い求める中小企業
大切にしたい会社5 株式会社樹研工業(愛知県)
  社員は先着順で採用。
  給料は「年齢序列」の不思議な会社
大切にしたい会社6 未来工業株式会社(岐阜県)
  「日本でいちばん休みの多い会社」だから、不況知らずの会社になれる
大切にしたい会社7 ネッツトヨタ南国株式会社(高知県)
  全盲の方と行く四国巡礼の旅で、人の本当のやさしさを学んでもらう
大切にしたい会社8 株式会社沖縄教育出版(沖縄県)
  本当に世の中に役立つ事業をしたい。
  一人ひとりの命が輝く会社になりたい
エピローグ みなさんに伝えたい読者の方々からの手紙
おわりに





著者プロフィール

坂本光司(さかもと・こうじ)

福井県立大学教授・静岡文化芸術大学教授等を経て2008年4月より法政大学大学院政策創造研究科(地域づくり大学院)教授及び法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科(MBA)客員教授。他に、国、県、市町や商工会議所等団体の審議会や委員会の委員を多数兼務。専門は中小企業経営論・地域経済論・産業論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<関連サイト>

『日本でいちばん大切にしたい会社』公式ブログ

 


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