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2011年6月29日水曜日

なぜ「経営現地化」が必要か?-欧米の多国籍企業の歴史に学ぶ


「最近の若者は海外に行きたがらない」。よく耳にするセリフですね。

たしかにそのとおりです。しかし、これはバブル崩壊の頃から言われていた話。理由は、少子高齢化の影響がストレートにでているためだと思われます。

なんといっても一人っ子が増えているので、親が手元からてばなしたくないというケースが多いことは、新人採用にかかわってたときに何度も経験しました。本人は入社したいと思っても、親の都合で断念する。子どもの側からみても、年老いてゆく親をほっておいて上京するのは、しのびないものがあると思う。

これは海外勤務の話ではありません。国内ですらそうなのです。地方から上京するという話ですらまとまらないことが多い。これは中小企業ではあたりまえの傾向です。

若者じしんも考え方が大きく変化しています。地元で就職して、地元の友人たちとずっとつきあい続けたいという意向は、すでに定着したといっていいでしょう。

何ごともメリットとデメリットは裏腹の関係です。逆もまたしかり。デメリットと思われることも、視点をかえればそれはメリットでもある。

今回の大震災と大津波で東北の太平洋岸は大規模に破壊されましたが、テレビでみていると、老人だけでなく、若者たちもまた「地元に残りたい」と口々にのべています。一言でいえば「地元愛」。これが悪いとは誰に言えましょうか?

海外に出る、出ないも同じことです。あくまでも「個人の選択」の問題ですから、一概に、いい悪いはいえないと思います。

いままでのように、有無をいわせず海外にいかせる、国内移動させるという、日本企業ではあたりまえだった考えと慣習が、あまりにも個人を軽視したものだったというべきでしょう。

わたしは、こういう状況だからこそ、さらなる「現地化」を進めるべきだというのが持論です。日本で事業展開する米国の外資系企業も、そういう考えで海外事業展開しています。


植民地における「二重支配体制」が多国籍企業の経営モデルとなった

米国系企業や欧州系企業では、日本企業とはまったく異なるアプローチをしています。

米国や欧州のグローバル企業の現地法人では、ローカル経営は現地代表(マネージング・ディレクター)に権限委譲して完全にまかせていることがフツーです。

たとえば私がいたタイでも、欧米系のグローバル企業の現地代表はみな30歳台から40歳台ににかけての華人系タイ人で、米国でM.B.A.を取得した者が大半でした。従業員はいうまでもなくローカルのタイ人です。

ただし、現地法人トップの人事権とカネにかんしては、親会社がガッチリ握って離さないというのは、進出先の全世界に共通した経営手法ですね。

英語で経理部のことをコントローラー(Control)というのはそういう意味なのです。現地代表は、本社でいえば課長程度といってもいいでしょう。

じっさいに、日本にある外資系企業でも、本社の都合にほんろうされるケースが非常に多いのは、マイクロソフトやグーグルなどの動きを見ていればあきらかでしょう。

なぜこのような経営形態になったかというと、やはり「植民地」における企業経営の経験が非常に大きいと思われます。

英領インドにおける英国の東インド会社(East India Company)、蘭領東インド(=現在のインドネシア)におけるオランダの東インド会社が典型的な事例です。英国とオランダの双方に本社のある、エネルギーのロイヤル・ダッチ・シェル(Royal Dutch Shell)や、食品のユニリバー(Unilever)のような英蘭系グローバル企業は、その最右翼というべきでしょう。

要は、限られた駐在員ですべてをこなすのは不可能なので、「二重支配体制」を創り上げたのです。

「二重支配体制」とは、日本の近現代史の例でいえば、敗戦後進駐してきたアメリカ占領軍が、日本の官僚制を温存して現地の行政を行わせ、肝心かなめのところはガッチリ軍政当局が押さえていた、という「二重支配体制」を考えてみればいいでしょう。

マッカーサーはこの支配体制を、すでに当時は米国の植民地であったフィリピンで実験済みだったのです。マッカーサーは父親の代からフィリピンには深い利害関係をもっていました。


欧米の多国籍企業で「経営現地化」が進んだもう一つの理由

第二次大戦後は、とくに中南米では現地駐在員が、誘拐やテロの被害に遭遇することが激増し、この対策として現地経営は現地人にまかせていった、という歴史的背景もあります。これは、米国でもドイツなどの欧州企業でも同じことです。

日本人のビジネスマンが、フィリピンや中南米で身代金目的で誘拐される事件が相次いでいた頃、米国や欧州の多国籍企業はすでに、「経営現地化」を完了していたわけなのです。

中南米の事例は、M.B.A.の授業で「国際ビジネス」を受講したとき、元米国海軍士官のエンジニアで、ブラジル駐在体験もある国際ビジネスマン経験をもつ教授が教えてくれましたが、なるほどと思ったものです。

ちなみに、その教授は、朝鮮戦争には海軍士官として出征し、佐世保基地に駐在したという経験もあり、日本人の私には親しく接していただいた。東部出身の、アナポリスの米海軍兵学校(US Naval Academy)出身のエリートでした。

進出先の現地での企業経営は、できるだけ現地出身の人間にまかせていくというのがスジとしてとおるだけでなく、合理的でもあるというべきでしょう。このような形をとれば、やる気で能力ある現地社員のモチベーションをうまく活用することも可能になります。

これは個々の企業によって対応は異なるでしょうが、必ず進めていかねばならない課題といっていいでしょう。

現地に骨を埋めろ、というのはたやすいですが、それを強いることは韓国企業ならいざしらず、現在の日本では難しい。現地滞在はとりあえず数年、というのが限界ではないでしょうか?

それなら、いっそのこと現地出身の人間を採用して日本国内で教育訓練し、現地に送り返しほうが現実的でだといえるかもしれません。

もちろん、経営者自身が現地に骨を埋めるつもりであれば、それはそれでかまいません。


とはいえ、「ビジネスに唯一の正解はない」!

とはいえ、「経営現地化」が最終解決ではないことは、「現地化」に潜む落とし穴-「ついに誕生!中国人総経理」で暗転した現地法人の顛末 という記事にも書かれています。「総経理を中国人にすること」が現地化の目的ではない。責任権限の明確化が不可欠なわけですね。

「ビジネスに唯一の正解はない」、というのはこのケースもふくめて、すべてのケースにあてはまるといってよいでしょう。

どこの国でも似たような事例があります。モデルが正しくても、運用する仕方と運用する主体である人間次第で、結果は異なってくるものなのです。

日本企業はまだまだ海外事業の経験を十分につんだ状態とはいえないでしょう。多国籍展開をすすめる大企業ですらそういう状況ですから、中堅中小企業は、まだまだ試行錯誤を続けていかねばならないのは仕方ありません。

ですが、日本の大企業をそのままなぞるのは、経営資源のすくない中堅中小企業では難しいものもあります。参考にしつつ、独自の取り組みを行うことも必要かもしれません。

場合によっては、官僚的な大企業組織よりも、柔軟かつスピーディに「経営現地化」を進めることができるかもしれません。ただし、優秀なブレインが必要でしょう。



<ブログ内関連記事>

書評 『この国を出よ』(大前研一/柳井 正、小学館、2010)

イエズス会士ヴァリリャーノの布教戦略-異文化への「創造的適応」
・・キリスト教を布教する立場からみた異文化の土地における「経営現地化」の方法論について。そのエッセンスは、現地語に習熟、現地の文化と風習を学んで適応することから始める。現地に大幅な権限委譲を行い、かつ現地人の担当者を育成する。将来、現地の統轄をまかせることのできる現地人責任者を育成する教育を現地で行う。

書評 『メイド・イン・ジャパンのキリスト教』(マーク・マリンズ、高崎恵訳、トランスビュー、2005)
・・同じく、インバウンドの立場からの「経営現地化」を考えるには示唆の多い本

書評 『村から工場へ-東南アジア女性の近代化経験-』(平井京之介、NTT出版、2011)-タイ北部の工業団地でのフィールドワークの記録が面白い ・・経営する側ではなく、経営される側のローカル従業員たちはどう考えているかがわかる内容

書評 『グローバル・ジハード』(松本光弘、講談社、2008)-対テロリズム実務参考書であり、「ネットワーク組織論」としても読み応えあり

書評 『誰も語らなかったアジアの見えないリスク-痛い目に遭う前に読む本-』(越 純一郎=編著、日刊工業新聞、2012)-「アウェイ」でのビジネスはチャンスも大きいがリスクも高い!

(2014年5月22日 情報追加)





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2011年6月21日火曜日

ベスト・プラクティスと反面教師-その両方からともに学ぶことが大事!


生き方、志、マインドをそれぞれの会社が持っているかどうかをお客様だけでなく、従業員にも見抜かれてしまいます。

 これは、小田原のカマボコ製造メーカー鈴廣の鈴木社長のコトバです。日経ビジネスオンラインに掲載されていた記事「こすからい会社には天罰が下る!震災に負けない人々(7)鈴木博晶・鈴廣社長」から引用させていただきました。

 鈴木社長はまた、つぎのようにも言っています。

カマボコ業を確実に継続していくことが与えられた使命です。無謀なことに走らず、ただ消極的にもならない。そうして、きちんとカマボコの需要を作っていく努力を続けていきます。つまり、ただひたすら現状を守っているだけではダメで、やはり何か新しいものも打ち出していかなければなりません」、とも語っています。


 「生き方」、「志」(こころざし)、「マインド」、「使命」

 ぞれぞれ日本語では似たような内容をあらわしたコトバですが、これは個人だけでなく、組織でも同様に必要なことです。

 しかも、組織においては、組織という抽象的な存在ではなく、組織の歴史と命運を背負った、経営者という個人の「生き方」、「志」(こころざし)、「マインド」、「使命」がダイレクトに反映します。

 組織の頂点に立つ人の「生き方」は、対外的にはお客様、対内的には従業員に丸見えです。

 とくにカマボコのように、日本の伝統食でありながら、ライフスタイルの変化によって需要が減少している業界においては、なおさら経営者個人と組織全体の「生き方」、「志」(こころざし)、「マインド」、「使命」が重要な要素となってくるでしょう。

 そういった「生き方」、「志」(こころざし)、「マインド」、「使命」に共鳴していただける「ファン」を一人でも多くもつこと、これはいままででもそうでしたが、これからはますます大事なことになってきます。

 企業経営は、業績が数字としてでてきますが、人間が主体になって行う活動である以上、人間のやる気を引き出し、その気にさせていくためにはコトバと行動が一致していなくてはなりません。

 それが英語でいうインテグリティ。日本語でいえば言行が首尾一貫していることですね。

 よき実例からはベスト・プラクティス(best practice)として徹底的に学びとり、悪しき実例からも自分の身を正すために「反面教師」として大いに学ぶことが重要です。とくに政治の世界は「反面教師」として。

 企業経営も政治も、「ファン」を一人でも多くもち、「ファン」の満足度を高めることは共通しています。そして「ファン」は社外だけでなく、社内でも。従業員が自社の「ファン」でない会社では、サステイナブルな成長は不可能です。

 今回はそのベスト・プラクティスの実例として、最近の経済記事から紹介させていただきました。



<関連サイト>

鈴廣(公式サイト)

日経ビジネスオンラインに掲載されていた記事「こすからい会社には天罰が下る!震災に負けない人々(7)鈴木博晶・鈴廣社長」






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2011年6月20日月曜日

NHK・Eテレ 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第8回放送(最終回)-最終課題のプレゼンテーションと全体のまとめ


NHK・Eテレの「スタンフォード白熱教室」。ティナ・シーリグ教授の「起業家育成コースの集中講座」(Stanford Technology Ventures Program)。まさに、シリコンバレーのテクノロジー・ベンチャーのゆりかごであるスタンフォードらしい授業ですね。

いよいよ、本日は最終回学生たちの「最終課題」のプレゼンテーションです。

まずはいつもどおり、ウォームアップから。今回のウォームアップもまたカラダとアタマをつかったものでした。カラダを動かして肩のチカラを抜いていく。アタマの回転と柔軟性はスタンバイ。

最終回は「コーヒーの新しい飲み方を考える」。公式サイトの説明は以下のとおりです。

「発想の転換を迫り、革新的な アイデアを生み出す手法」を学ぶスタンフォード大学起業家育成講座。その根底にあるのはテイナ・シーリグ先生の「創造性は誰でも学ぶことができる」という考え方です。
最終回、学生たちに与えられた課題は「コーヒーの新しい飲み方」を考えること。
これまでに学んできたブレインストーミング、チームでの作業の仕方、最高のアイデアを考えた後で最低のアイデアも考えてみること、前提を疑い、ルールを破って問題を捉え直すことなど、吸収したすべての思考ツールを駆使して課題に挑みます。
果たしてどんなアイデアが飛び出すでしょうか。


最終課題は、第4回の授業で示されました。NHK・ETV 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第4回放送- 「6色ハット」 は個人レベルの思考パターンと仕事スタイルを 「見える化」 する を参照してください。

課題は、まずはコーヒーを飲むという経験は何であるか調べつくすこと。ラディカルで常識破りのアイデアを出し、試作品をつくって実際のユーザーに試飲してもらうこと。新しい飲み方を、2分間のビデオでプレゼンテーションすること。

今回の放送ではじめてわかりましたが、第4回の授業から最終回の第8回の授業まではたった1週間。この授業はいわゆる「集中講座」だったようです。限られた時間のなかでプレッシャーと戦いながら課題を実行することの重要性も同時に体感させることも意図されていたようです。

プレゼンテーションは以下の要領で行われました。

1. 3人から4人で構成された7つのチームが、チームごとに 2分間のビデオを上映
2. ビデオ上映後にデザインのプロセスを口頭で解説
3. ゲスト審査員からのコメント

ゲスト審査員は2人、スタンフォード大学教育デザイン研究所ディレクター モーリン・キャロルとスタンフォード大学デザインスクール学部ディレクター バーニー・ロス。

シーリグ教授は、事前に各グループから試作品については事前に見ているようですが、ビデオについては見ていないという前提になっていました。徹夜までして完成させたグループもあったようです。

ビデオ・プレゼンでチェックされていたのは、「コーヒーの新しい飲み方」と試作品そのものだけではなく、とくに発想のストーリーとプロセスについてでした。第2回の授業ででてきた、「Emphathize」(共感)-「Define」(定義)-「Ideate」(考察)-「Prototype」(試作)-「Test」(検証)のサイクルをどのグループも踏まえたものとなっていました。

各グループは意図したわけではないにせよ、じつにさまざまな切り口から「コーヒーの新しい飲み方」を提案していました。

コーヒーの飲み方そのもの、コーヒーを飲む場所、コーヒーの注文のしかた、コーヒーの味、コーヒーにかわる同機能の製品・・・などなど。同じ課題でも、このようにさまざまな切り口からのアプローチが可能だということですね。たいへん面白いプレゼンでした。


米国ではこのような授業はシーリグ教授のものだけではない!

このプレゼンテーションをみていて思い出したのは、わたし自身の経験です。

M.B.A.の授業が始まる前に、カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)のサマー・エクステンション(夏期集中講座)に参加して、ビジネス英語の授業をとっていましたが、同じようにグループでの課題発表が最終授業で行われました。1990年のことですから、いまから21年前のことになります。

最終課題は、新しいマウスウォッシュ(口内洗浄剤)を提案してその宣伝まで考えてプレゼンテーションするというもの。なんだか「スタンフォード大学白熱授業」の最終課題と似ていますね(笑)。もしかすると、米国ではとくだん珍しい課題ではないのかもしれません。

一緒のグループになったのは、わたしを含めた日本人2人とイタリア人2にスペイン人2人の合計6人。最終的にわれわれのチームが提案したのは「ミッキー・マウス」という商品名。Mickey Mouth とは Mickey Mouse にかけたもの。これはイタリア人の発案。この彼がプレゼンテーションでも大いに手腕を発揮して、先生からはイタリア人はプレゼンがうまいと誉められていました。イタリアに戻ったらマッキンゼーに入ると言ってましたが、はたして目的は達成したのかどうか?

余談になりますが、同じグループを組んでみてわかったのは、イタリア人とスペイン人はお互いのコトバで意思疎通しあえるのに、国民性はかなり異なること。どちらも、日本人と共通している面とそうでない面がある。とくにイタリア人はふだんは徹底的に遊んでいながら、ここぞというときに集中力がすごいということでした。

アイデアはイタリア人が中心になってつぎからつぎへとだし、日本人がそれを交通整理、スペイン人は冷静に議論の行方をみながら協調するという具合に。見た目と違って面白いグループ編成になったようでした。授業が終わったあと、スペイン人の二人が「日本人はすばらしい!」と絶讃してくれたのは、なんだかこそばゆい感じもしましたが、同時にひじょうにうれしくも思いました。

M.B.A.を取得した、ニューヨーク州のレンセラー工科大学(RPI:Rensselaer Polytechnic Institute)でも、ハイテクベンチャー(Technological Entrepreneurship)の授業で似たような課題をつうじて体験しています。

研究開発の成果を商業化(commercialize)するというプロジェクト。これはセメスター3ヶ月かけてのプロジェクトですが、かなり実践的な内容の授業でした。アメリカ人男性とスペイン人(・・正確にいうとカタロニア人)女性の三人でチームを組みましたが、われわれのチームが選んだのは、大学の工学部教授が開発した「心臓にたまった水を外部から測定する機器」。

これを製品化するための調査とマーケティングプランの作成を行い、最終プレゼンテーションでは優勝!最後のプレゼンは大教室で、外部からの審査員も出席したもので、緊張しながらも充実した思い出が残りました。

このような実践を念頭においた体験型授業、対話授業というものは、レクチャー主体の授業とは違って、受講者にとっては自分が主体的にかかわっただけに印象が強く、長く記憶に残るということですね。

シーリグ教授の「起業家育成コースの集中講座」もまた同じですね。米国の教育方法ではけっして例外ではないのです。日本の教育もそろそろ、「勉強」から脱して、体験と対話をつうじての「学び」に移行していくべきでしょう。大人向けも子ども向けも。


全8回の授業のまとめとおさらい

プレゼンテーションが終わったあと、シーリグ教授から、全体のまとめとおさらいが行われました。

「創造性は誰でも学ぶことができる」
・・これは全体をつうじてのシーリグ教授の一貫した主張です。全8回の集中コースをつうじて、参加者だけでなく視聴者もみな実感したことでしょう。

「観察」(Observation)
・・これは何度強調してもしすぎることはないでしょう。自然科学にかぎらず、ビジネスでもすべての分野で絶対に必要なマインドセットですね。

「前提を疑う」
・・マインドマップをつかったブレーンストーミングを実行しましたよね。また「最高のアイデアと最低のアイデア」の演習も面白かったです。誇張することで問題を「見える化」するわけです。

「メタファー」(Metaphor)
・・「関連性のない問題を組みあわせてみる」。このメタファーというコトバそのものが重要です。

「問題を定義し直す」(Redifine)
・・問題の違う角度からみて捉え直すことですね。シーリグ教授が引き合いにだしていた「無重力空間でも書けるペンの話」は興味深い例ですね。機能が明確になればエンピツでいいじゃないかというロシア人の発想が紹介されていました。

「空間の重要性」
・・創造性に適した空間が重要であることは、日本でも幼稚園と小学校以上を比べてみるとよくわかりますよね。米国の先端企業がこれにいかにチカラをかけているか、グーグルやフェイスブックを引き合いにだすまでもありません。この「起業家育成コースの集中講座」じたいが、かなり意識した空間設計がなされていました。

「チームの重要性」
・・第4回の授業でやった「6色ハット」など、創造性を発揮させるための最適の組み合わせについても重要ですね。一人ではなくチームで、しかも最適の組み合わせを考えて。

「時間の重要性」
・・時間的制約のもとでかかるプレッシャー。これが創造性には意外と重要であるということ。ビジネスパーソンであれば実感できることでしょう。

「実験する姿勢をもつ」
・・試作品は最初から完璧をもとめず、その都度ためして早い段階から失敗することを繰り返す。


最後にシーリグ教授が強調していたのは、Creativity Tools だけでなく、Attitude と Creative Culture の重要性。

創造性を開発するさまざまな「技法」(ツール)にばかり注目が集まりがちなのは、日本だけでなく米国でも同じようですね。

技法はもちろん重要ですが、創造性を発揮するための「姿勢」と「カルチャー」。この3つが合わさって、創造性が大いに発揮されること、これはぜひアタマのなかにいれておきたいものです。


学びも多いが、集中力も要求される中身のきわめて濃い授業。これほど濃い 1時間もないのでは? そんな感想をもつ番組でした。







<関連サイト>


「スタンフォード白熱教室」番組概要(NHK)

自分で自分を社長にする(Tina Seelig:ティナ・シーリグ)(YouTube 映像)


<全8回の授業内容>

5月1日(日) 第1回 「ブレーンストーミングで可能性を探れ!」
5月8日(日)第2回 「名札をめぐる冒険」
5月15日(日)第3回 「最悪の家族旅行を考える」
5月22日(日)第4回 「6つの考える帽子」
5月29日(日)第5回 「30分で新製品を作る」
6月4日(日)第6回 「トランプで創造性を学ぶ」
6月12日(日)第7回 「あこがれの起業家に学ぶ」
6月19日(日)第8回 「コーヒーの「新しい飲み方」を考える」


<ブログ内関連記事>

NHK・ETV 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 全8回 が始まりました

NHK・ETV 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第2回放送-「問題解決」の前に「問題発見」! 急がば回れ!

NHK・ETV 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第3回放送-「ブレインストーミングには悪いアイデアはない!」

NHK・ETV 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第4回放送- 「6色ハット」 は個人レベルの思考パターンと仕事スタイルを 「見える化」 する

NHK・Eテレ 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第5回放送-プレゼンは「つかみ」と「ストーリー」、そして限られた時間でアイデアをカタチにする

NHK・Eテレ 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第6回放送-創造性はだれでも、どんな環境でも、発揮することができる!

NHK・Eテレ 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第7回放送-シリコンバレーで働く 4人のゲストに聞く、創造性にまつわる 7つの質問




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2011年6月15日水曜日

「一橋大学開放講座」(入城無料)のご案内 (2011年6月16日開催):今回のテーマは 「イスラーム政治経済」 


 「一橋大学開放講座」(無料)のご案内です。

 今回のテーマは「イスラーム政治経済」。いまや金融界でもたんなるオルタナティブ投資の域を超えてメジャー化しつつあるイスラーム金融と、イスラーム政治経済の話題について、それぞれの専門家からの一般向けの講演です。

 企画されたのは昨年のようですが、まさにいま旬のテーマですね。「3-11」で大混乱に陥ってしまって忘れてしまいがちの日本ですが、世界情勢は日本情勢とは関係なく、どんどん進展しています。

 2011年2月11日に実現した「エジプト民主化革命」のその後がどうなったのか、ビジネスパーソンとしてはぜひ聞いてみたものだと思います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
日時:2011年6月16日(木)18:00~20:00 
場所:如水会館 2F オリオンルーム
 〒101-0003  東京都千代田区一ッ橋2-1-1  03(3261)1101(代)
演題1:世界を駆け巡るイスラム金融-ペトロダラーと民衆の力
 講師:吉田悦章(早稲田大学客員教授・国際協力銀行) 
演題2:グローバル化する世界のなかでの中東イスラム世界
 講師:加藤 博(一橋大学経済学研究科教授)
料金:入場無料
会場アクセス: 

 ・地下鉄東西線竹橋駅下車 1b出口 徒歩4分
 ・地下鉄半蔵門線神保町下車 A8・A9出口 徒歩3分
 ・都営地下鉄三田線神保町下車 A8・A9出口 徒歩3分
 ・都営地下鉄新宿線神保町下車 A8・A9出口 徒歩3分
 (神保町A9出口は白山通りの反対側になりますが、エレベーター・エスカレーターが利用できます)
 ★首都高速道路・・一ツ橋・代官町・神田橋   インターチェンジをご利用ください。
  ただし、日曜日・祝日(10時~17時)は神田橋をご利用ください。
  http://www.kaikan.co.jp/josui/company/access.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 わたくしも以前、「企業とスポーツ」というテーマで、平成9年(1997年)に講演したことのある、昭和29年(1951年)以来60年の歴史をもつ由緒ある「開放講座」です。過去の開放講座一覧をご覧ください。また、「企業とスポーツ」についてはこちらから参照お願いします。 

一橋大学開放講座は、社団法人如水会の協賛を得て、一般社会人を対象に「学問と社会の交流」という趣旨で、その時々の経済情勢のトピックをテーマに選び、本学の教員・卒業生を講師として実施しています。

 詳しくは、一橋大学のサイト「学外の方へ・開放講座」をご覧ください。
 

吉田悦章(早稲田大学客員教授・国際協力銀行)の著書から



加藤 博(一橋大学経済学研究科教授)の著者から




<ブログ内関連記事>

エジプトの「民主化革命」(2011年2月11日)

本日(2011年2月11日)は「イラン・イスラム革命」(1979年)から32年。そしてまた中東・北アフリカでは再び大激動が始まった

本日よりイスラーム世界ではラマダーン(断食月)入

バンコクのアラブ人街-メディカル・ツーリズムにかんする一視点




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2011年6月13日月曜日

NHK・Eテレ 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第7回放送-シリコンバレーで働く 4人のゲストに聞く、創造性にまつわる 7つの質問


 NHK・Eテレの「スタンフォード白熱教室」。ティナ・シーリグ教授の「起業家育成コースの集中講座」(Stanford Technology Ventures Program)。まさに、シリコンバレーのテクノロジー・ベンチャーのゆりかごであるスタンフォードらしい授業ですね。

 すでに授業は第7回目、いよいよ最終回の全8回の授業までのこり1回となってしまいました。

 まずはいつもどおり、ウォームアップから。今回のウォームアップはメンバーを 2つのチームをわけて、2分間でチーム名をきめてダンスの振り付けまで考えるというもの。このチームがそのまま、今回の授業ではそのまま対抗戦のチームとなります。

 カラダを動かして肩のチカラを抜いていく。しかも今回はダンスですから、カラダのほぐれかたも違いますね。アタマの回転と柔軟性はスタンバイ。

 今回(6月12日)のテーマは「あこがれの起業家に学ぶ」。公式サイトの説明は以下のとおりです。

 実際の企業の中で、創造性はどう発揮されているのか。今回は、フェイスブックの若手リーダーやスマートフォンの原型を提案した起業家などビジネスの第一線で活躍している 4人のゲストを招き、クイズ形式でそれぞれの企業の創造性の秘密を探り出していきます。
採用面接で創造性をどう見抜くのか、創造性を高めるためのチームの編成方法、空間の使い方の工夫、アイデアを出すための時間は仕事の何パーセントか、アイデアを実行する決定権は誰にあるのかなどさまざまな設問を通して、学生たちはクリエイテイブな企業文化を創るには多様なアプローチがあることを学びます。 


 今回の授業は、パネル形式で4人のゲストに、シーリグ教授がモデレーターとして質問し、その解答がホントかウソかを学生のチームに判定させて勝敗を競わせるというゲーム形式

 ゲストスピーカーを読んでスピーチをしてもらい、その後の質疑応答をつうじてディスカッションするという形式は、米国だけでなく日本でも行われますが、質疑応答のセッションそのものをゲームにしてしまうというのは、じつにクリエイティブな授業になっていますね。

 今回招かれたゲストは以下の4人です。

ジェフ・ジョーキンス
 スマートフォンの原型を開発
 1992年パーム社(Palm)を設立
 情報携帯端末(PDA)を開発
 脳神経科学に基づくソフトウェア開発も

ドナ・ノビツキー
 会社立ち上げのスペシャリスト
 ウェブ制作会社の CEO などを歴任
 ベンチャーキャピタル(VC)の経験から16社以上の起業にたずさわる

ジュリー・ズー
 「いいね!」ボタンをつくった人
 2006年スタンフォード大学卒業(シーリグ教授の授業を受講)、フェイスブック入社
 現在はプロダクトデザイン・マネージャー

ブレンダン・ボイル
 150以上のオモチャを発明
 世界に支社をもつデザイン会社 IDEO社オモチャ部門リーダー

 起業家が二人(うちひとりはベンチャー・キャピタリスト)、デザイン関係者が二人と、面白い組み合わせになってます。こういう人たちを授業に呼べるのも、スタンフォード大学が立地するシリコンバレーならではですね。

 起業クイズのルールは以下のとおりです。

●ゲストはほんとうのことを答えるかどうかわからない
●ウソかホントかを見抜けたら1ポイント、間違えたら相手チームに1ポイント

 学生チームに質問を考えさせてでてきた質問とあわせて、シーリグ教授がモデレーターとなって7つの質問をし、質問のそれぞれにゲストの4人がひとりづつ解答をするという形です。ゲストは赤いソファに腰掛けてリラックスした状態で質問に答えます。

 ゲストに対する質問を列挙しておきましょう。

(Q1)面接で創造性をどう見抜く
(Q2)創造性を高めるチームの変成方法は?
(Q3)創造性を高めるためのオフィス空間の工夫は?
(Q4)アイデア出しに使う時間は仕事の何%?
(Q5)アイデアを実行する決定権は誰に?
(Q6)アイデアを出すための道具やシステムは?
(Q7)クリエイティブな空間は誰がつくっている?

 ゲストはそれぞれ、ウソかホントかわからないが、いかにもありそうなもっともらしい話をしていましたね。学生たちは真剣に考えてましたが、そのそも世の中のすべてはウソかホントか完全に班別できないもの。当事者以外は知らないのは当然といえば当然ですね。

 詳細は省略しますが、最後にシーリグ教授によって、本日のゲストからの「学び」がまとめられていたので、ゲストごとに列挙しておきましょう。今度の順番はソファに座った、こちらからみて左側から。

ジェリー・ズー(フェイスブック)

●大きな組織は「クリエイティブ」という尺度だけで人は管理できない
●膨大な数のユーザーに向けて製品の品質を検証する人たちの比重が大きい
●創造性のある会社の雰囲気づくりは採用から始まる


ジェフ・ホーキンス(2社のIPOを実現後、現在は3社目を立ち上げ中)

●自分のつかっているものの不満点を徹底的に洗い出す
●どんなに悪い製品でも必ず一つは学ぶべき点がある


ドナ・ノビツキー(ベンチャー・キャピタリスト)

●メンバーが刺激を受けるようなユニークな会議のあり方を提案する
●チーム編成のときにはなるべくセクションのちがう人を組み合わせる


ブレンダン・ボイル(IDEO社おもちゃ部門リーダー)

●チーム編成は「熱意」だけではできない
●100%クリエイティブはありえない。売ることも重要
●クリエイティブなアイデアの選択には多数決は効果的でない場合もある

 ジェリー・ズー(フェイスブック)の発言については、フェイスブックも映画『ソーシャルネットワーク』の立ち上げ期ははるか昔の話、現在ではインド、中国の人口についで多い5億人のユーザーにむけて、3,000人超の社員が働いている大組織となっているわけですね。

 ジェフ・ホーキンス(2社のIPOを実現後、現在は3社目を立ち上げ中)の発言については、エンジニアとして製品開発にかかわってきただけに、説得力がありますね。

 ドナ・ノビツキー(ベンチャー・キャピタリスト)は、自らも起業体験をもっているベンチャー・キャピタリストならではの発言。

 ブレンダン・ボイル(IDEO社おもちゃ部門リーダー)の発言については、デザインの重要性は日本企業ももっと意識すべきしょう。企業活動におけるクリエイティブはアートではないとはいえ、ある種の直観も必要ということですね。

 ゲストの発言のまとめとそれに対するあたさいの感想を書いてみましたが、まあそんなものかという感想もあるかもしれませんね。ただ、教訓というものは、あくまでも実際に取り組んでいるプロセスのなかではじめて納得できることですし、実際に試行錯誤してみないと体感できないことでも多々あることでしょう。

 学生のあいだにこういう話を聞いておくと、実際に働き出してから、かならず思い出すものですね。そのときにはじめて、ゲストの言っていたことはこうだたのか、教授の言っていたことはそういうことだったのかとわかったりするものです。

 何ごとも実際にやってみないと、ほんとうのことはわかりません。

  ............................................................
 
 いよいよ、次回の全8回の授業は最終回。学生たちの「最終課題」のプレゼンテーションが楽しみですね!

5月1日(日) 第1回 「ブレーンストーミングで可能性を探れ!」
5月8日(日)第2回 「名札をめぐる冒険」
5月15日(日)第3回 「最悪の家族旅行を考える」
5月22日(日)第4回 「6つの考える帽子」
5月29日(日)第5回 「30分で新製品を作る」
6月4日(日)第6回 「トランプで創造性を学ぶ」
6月12日(日)第7回 「あこがれの起業家に学ぶ」
6月19日(日)第8回 「コーヒーの「新しい飲み方」を考える」

 学びも多いが、集中力も要求される中身のきわめて濃い授業。これほど濃い 1時間もないのでは? そんな感想をもつ番組です。最終回もお見逃しなく!



<関連サイト>

「スタンフォード白熱教室」番組概要(NHK)

自分で自分を社長にする(Tina Seelig:ティナ・シーリグ)(YouTube 映像)


<関連情報>

 ゲストの一人が在籍している IDEO社はシリコンバレーのどまんなか、スタンフォード大学が立地するパロアルト市を本拠地とするデザイン会社です。トム・ピーターズも惚れ込んでいるイノベーティブな会社。

 『発想する会社!-世界最高のデザイン・ファーム IDEO に学ぶイノベーションの技法』(トム・ケリー / ジョナサン・リットマン、鈴木主税/秀岡尚子訳、早川書房、2002)は、創業経営者がみずから書いたプロダクト・デザインに重点をおいたイノベーションの教科書。日本でもロングセラーです。

目 次

はじめに-トム・ピーターズ
第1章 イノベーションの頂点
第2章 草創期の翼で飛びつづける
第3章 イノベーションは見ることから始まる
第4章 究極のブレインストーミング
第5章 クールな企業にはホットなグループが必要だ
第6章 プロトタイプ製作はイノベーションへの近道
第7章 温室をつくろう
第8章 予想外のことを予想する
第9章 バリアを飛び越える
第10章 楽しい経験をつくりだす
第11章 時速100キロのイノベーション
第12章 枠をはみだして色を塗る
第13章 「ウェットナップ」インタフェースを探して
第14章 未来を生きる
第15章 完璧なスイングを身につける
謝辞

 IDEO社は、シーリグ教授が「スタンフォード白熱授業」で強調してきた、ブレーンストーミングや試作品(プロトタイプ)つくりをすべて実現している会社です。
 カラー写真が満載の、見て読んで楽しい本です。デザイン思考とイノベーションを学ぶためにぜひお薦めします。





<ブログ内関連記事>

NHK・ETV 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 全8回 が始まりました

NHK・ETV 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第2回放送-「問題解決」の前に「問題発見」! 急がば回れ!

NHK・ETV 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第3回放送-「ブレインストーミングには悪いアイデアはない!」

NHK・ETV 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第4回放送- 「6色ハット」 は個人レベルの思考パターンと仕事スタイルを 「見える化」 する

NHK・Eテレ 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第5回放送-プレゼンは「つかみ」と「ストーリー」、そして限られた時間でアイデアをカタチにする

NHK・Eテレ 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第6回放送-創造性はだれでも、どんな環境でも、発揮することができる!

Facebook Principle (フェイスブックの原則) を MVV (ミッション・ビジョン・バリュー) の観点からみてみよう




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2011年6月8日水曜日

Facebook Principle (フェイスブックの原則) を MVV (ミッション・ビジョン・バリュー) の観点からみてみよう


 軸、中心軸、背骨、プリンシプル、原理原則・・・

 いろんな言い方が可能ですが、原理原則がしっかりしていれば、海外進出にあたってはローカル市場の特性にあわせてローカライズできる部分はそうすればいい、カスタマイズできる部分はそうすればいい

 そして、ローカライゼーションは現地の担当者にまかせる

 米国でうまれたフェイスブックもまた、その定石を愚直なまでに貫いています。

 日本での事業展開にあたって、フェイスブックの海外戦略担当者がインタビューに答えた記事がありました。「独占インタビュー! 絶好調のFacebook・海外戦略担当者が語った、日本攻略への布石」 (日経トレンディ)。

ミクシィなどの SNS が先行する日本市場ですが、フェイスブックは 「実名主義」や「顔出し」といった原則を絶対に(!)曲げようとしません。

 もともと、大学の顔写真入り新入生紹介本であるフェイスブック(・・直訳すると「顔本」(笑)ですね)を、オンライン化したのがフェイスブックですから、当然といえば当然でしょう。

 それだけでなく、事業家というよりは社会革命家のような創業経営者マーク・ザッカーバーグの、人生における基本姿勢、信念といったものが、事業経営にもストレートに反映しているようです。そのため、現在にいたるまでさまざまな物議をかもしながらも突き進んでいるのは、みなさんご承知のことでしょう。

 「実名主義」や「顔出し」という、頑(かたくな)なというか、ゴーマンにも見えるこの原理原則を受け入れるか、受け入れないか、この原理原則は日本人にはまだまだ高いハードルなのかもしれません。

 しかし、フェイスブックに参加することを意志決定した日本人は、みなこの原則をさいしょは抵抗がありながらも受け入れ、ある意味ではマーク・ザッカーバーグの思想に共鳴していくということも体験していくことになるのでしょう。

 フェイスブックの言語はいうまでもなく英語ですが、日本で普及がはじまった最大の要因は、「いいね!」ではないかと考えています。

 英語では 「Like !」、これを直訳して 「好き!」 などという表現にせず、「いいね!」という日本語を採用したのは、ほんとうに天才的なヒラメキです。これぞカスタマイゼーションの極地というべきでしょう。

 このほか、日本語環境むけにさまざまなカスタマイゼーションを行っていることは、フェイスブックの伝道者の方々が積極的に情報発信していますので、あらためてわたしが指摘することはありません。

 以下に、Facebook Principle (フェイスブックの原則)を転載しておきます。
http://www.facebook.com/principles.php

 日本語と英語のニュアンスに注意を払いながら読んでみてください。

1. 情報を共有し、つながりになる自由 (Freedom to Share and Connect)
2. 情報の所有と管理 (Ownership and Control of Information)
3. 情報の自由な流れ (Free Flow of Information)
4. 基本的平等 (Fundamental Equality)
5. 社会的価値 (Social Value)
6. オープンなプラットフォームと標準 (Open Platforms and Standards)
7. 基本的サービス (Fundamental Service)
8. 公共の福利 (Common Welfare)
9. 透明性のあるプロセス (Transparent Process)
10. 1つの世界 (One World)



Facebook Principles (フェイスブックの原則)

Facebookは、世界のオープン性と透明性を高めることを目的として構築されています。これにより、優れた理解とつながりが生まれると弊社は考えています。Facebookは、個人が共有し、つながりを持つことができる優れた機能を提供することで、オープン性と透明性を推進しますが、これらの目標を達成するうえで、特定の原則がFacebookの指針となります。これらの原則の達成の制約となるのは、法律、テクノロジー、進化する社会規範の制限のみであるべきです。したがって、Facebookサービス内におけるそれらの権利および責任の基盤として、これらの原則を確立するものとします。


Facebook Principles

We are building Facebook to make the world more open and transparent, which we believe will create greater understanding and connection. Facebook promotes openness and transparency by giving individuals greater power to share and connect, and certain principles guide Facebook in pursuing these goals. Achieving these principles should be constrained only by limitations of law, technology, and evolving social norms. We therefore establish these Principles as the foundation of the rights and responsibilities of those within the Facebook Service.


1. 情報を共有し、つながりになる自由 (Freedom to Share and Connect)
人は、欲しい情報が何であれ、それをあらゆる媒体および形式で共有する自由を持ち、また、当事者同士が同意している限り、いかなる人、組織、サービスともオンラインでつながりになる権利を有するべきです。

People should have the freedom to share whatever information they want, in any medium and any format, and have the right to connect online with anyone - any person, organization or service - as long as they both consent to the connection.


2. 情報の所有と管理 (Ownership and Control of Information)
人は自分の情報を所有すべきです。また、それを好きな人と共有し、好きな場所へ持ち運ぶ(Facebookサービスから削除する行為を含む)自由、さらに、自分の情報を共有する相手を選び、そのような選択を保護するプライバシーコントロールを設定する自由を持つべきです。ただし、Facebookサービスの外部では特に、そのような自由によって、情報を受け取った人がその情報をどのように使用するかを制限することはできません。

People should own their information. They should have the freedom to share it with anyone they want and take it with them anywhere they want, including removing it from the Facebook Service. People should have the freedom to decide with whom they will share their information, and to set privacy controls to protect those choices. Those controls, however, are not capable of limiting how those who have received information may use it, particularly outside the Facebook Service.


3. 情報の自由な流れ (Free Flow of Information)
人は、他の人によって参照可能となったすべての情報にアクセスする自由を持つべきです。また、この情報の共有とアクセスを簡単、迅速、かつ効率的にする実用的なツールも持つべきです。

People should have the freedom to access all of the information made available to them by others. People should also have practical tools that make it easy, quick, and efficient to share and access this information.


4. 基本的平等 (Fundamental Equality)
個人か、広告主か、開発者か、組織か、その他の団体かを問わず、あらゆる人は、自分の主な活動が何かに関係なく、Facebookサービス内で自由に表現し、配信内容および情報にアクセスすることができるべきです。Facebookサービスを使用するすべての人に適用される一連の原則、権利、責任が存在すべきです。

Every Person - whether individual, advertiser, developer, organization, or other entity - should have representation and access to distribution and information within the Facebook Service, regardless of the Person's primary activity. There should be a single set of principles, rights, and responsibilities that should apply to all People using the Facebook Service.


5. 社会的価値 (Social Value)
人は、自分のアイデンティティとつながりを通じて、信頼と評判を築く自由を持つべきであり、Facebookの利用規約で述べられている内容以外の理由で、Facebookサービス上の自分の情報が削除されることがあってはなりません。

People should have the freedom to build trust and reputation through their identity and connections, and should not have their presence on the Facebook Service removed for reasons other than those described in Facebook's Statement of Rights and Responsibilities.


6. オープンなプラットフォームと標準 (Open Platforms and Standards)
人は、利用可能な情報にアクセスするためのプログラマティックインターフェイスを持つべきです。これらのインターフェイスの仕様は、すべての人に公開され、すべての人が利用およびアクセスできるべきです。

People should have programmatic interfaces for sharing and accessing the information available to them. The specifications for these interfaces should be published and made available and accessible to everyone.


7. 基本的サービス (Fundamental Service)
人は、自分の存在を確立し、他の人とつながりを持ち、情報を共有するために、Facebookを無料で利用できるべきです。参加または貢献の度合いに関係なく、すべての人がFacebookサービスを利用できるべきです。

People should be able to use Facebook for free to establish a presence, connect with others, and share information with them. Every Person should be able to use the Facebook Service regardless of his or her level of participation or contribution.


8. 公共の福利 (Common Welfare)
Facebookとその利用者の権利および責任は、利用規約に記載されているべきであり、その内容と本原則に矛盾があってはなりません。

The rights and responsibilities of Facebook and the People that use it should be described in a Statement of Rights and Responsibilities, which should not be inconsistent with these Principles.


9. 透明性のあるプロセス (Transparent Process)
Facebookは、その目的、計画、ポリシー、運用に関する情報を公開すべきです。また、通知およびコメントのタウンホールプロセスと、本原則または利用規約の修正に関する入力および会話を促す投票システムを持つべきです。

Facebook should publicly make available information about its purpose, plans, policies, and operations. Facebook should have a town hall process of notice and comment and a system of voting to encourage input and discourse on amendments to these Principles or to the Rights and Responsibilities.


10. 1つの世界 (One World)
Facebookサービスは、地理的境界および国境を越えて、世界中であらゆる人が利用できるべきです。

The Facebook Service should transcend geographic and national boundaries and be available to everyone in the world.



 もちろん、これらの原理原則は最初からあったものではなく、事業展開をしていくなかで試行錯誤を続けながら練り上げていったものだと思います。

 個人でも組織でも、原理原則を明確にもつことの重要性をしめしているのが、ザッカーバーグであり、フェイスブックであるといっていいでしょう。まだまだ物議をかもす存在ではありますが、それは原理原則を貫く姿勢ゆえ。批判をものともせずに突き進む姿勢。

 使命感をもった経営者と企業は、ほんとうに強い。



<ブログ内関連記事>

書評 『フェイスブック 若き天才の野望-5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた-』(デビッド・カークパトリック、滑川海彦 / 高橋信夫訳、日経BP社、2011)

シェリル・サンドバーグという 「ナンバー2」 としての生き方-今週の Bloomberg BusinessWeek (ビジネスウィーク) のカバーストーリーから

書評 『Facebook(フェイスブック)をビジネスに使う本-お金をかけずに集客する最強のツール-』(熊坂仁美、ダイヤモンド社、2010)




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2011年6月6日月曜日

NHK・Eテレ 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第6回放送-創造性はだれでも、どんな環境でも、発揮することができる!


 NHK・Eテレの「スタンフォード白熱教室」。ティナ・シーリグ教授の「起業家育成コースの集中講座」(Stanford Technology Ventures Program)。まさに、シリコンバレーのテクノロジー・ベンチャーのゆりかごであるスタンフォードらしい授業ですね。

 すでに授業は第6回目、いよいよ全8回の授業の終盤に近づいてきました。意表を突いた課題とその後のディスカッション、じつに中身が濃い授業になっています。

 まずはいつもどおり、ウォームアップから。ウォームアップじたいがチームビルディングになっています。毎回趣向を変えながら、アシスタントの主導で、メンバー全員を巻き込みながら、カラダを動かして肩のチカラを抜いていく。カラダがほぐれれば、アタマの回転と柔軟性はスタンバイ。

 今回(6月5日)のテーマは「トランプで創造性を学ぶ」。公式サイトの説明は以下のとおりです。

 新しいものを創り出す力は、新製品のデザインや開発段階だけのものではありません。
ビジネスのあらゆる場面で要求されます。
 学生たちはトランプを使ったユニークなゲームで、どんな企業でも、どんな役割やレベルでも創造性を発揮する機会はあることを学び、何が起きるか予想できない状況の変化に対応して、クリエイテイブな解決策を模索していきます。
 そのためには、自分がルールだと思い込んでいることから自分を解放することが創造的になれる第一歩であることを実感します。常識を覆す学生たちの鮮やかな発想をお楽しみに。


創造性を学ぶための課題演習

 課題は、タイトルにあるとおり「トランプで創造性を学ぶ」。まずは、いままでまったく組んだことのない3人で一組のチームをつくります。

 これをブロックでつくった壁で「二つの世界」に分ける。向かって左手が「テーブル派」、向かって右手が「イス派」

 「テーブル派」の世界には、それぞれのチームごとにテーブルが用意されています。「イス派」の世界には、人数分のイスがあるだけでテーブルはいっさいありません。

 それぞれの世界は、4チームの構成になっています。

 なぜ、壁で二つに区切ったのかは、課題終了後に明かされることになります。


課題内容とゲームのルール

 課題演習の内容とゲームのルールは以下のとおりです。所要時間は40分。

●各チームにトランプのカードを一束、チップを10枚(チップは1枚1点)。
●トランプで家をつくる 使うトランプは同じ絵柄のもの
●各階は赤または黒で統一 最上階は絵札を使用


 それぞれの世界に3組のトランプを枚数を間引いて4チームに分けられます。

 最終的に、得点数によって成果が表現されます。得点の集計方法は以下のとおりです。

●得点の集計方法① 使われたトランプ1枚につき1点
●得点の集計方法② 家の階数ごとにボーナスポイント1点加算
●得点の集計方法③ 52枚使った場合ボーナスポイント20点加算
●得点の集計方法④ 手持ちのチップの数もポイントに加える


 さて、演習の開始です。所要時間は 40分、開始時点の条件は「トランプは3種類、チームは4つ、配られ方はバラバラ」です。

 「ゲームのルール」は上記の 3つのみ。このルールをどう捉えるかも演習の大きな要素になります。
 
 じっさいに演習が始まると、それぞれの「世界」ごとに異なる動きがみられて面白いですね。なぜ壁をつくって二つの世界に分けたのか、当事者の学生たちには進行中はわかりませんが、ギャラリーである視聴者の立場からみると、あきらかに違う動きが展開しつつあることが見て取れます。

 10分ごとにあらたなルールが導入されていきます。

●10分経過 ステッカーをチップ1枚で販売
●20分経過 追加でトランプ3枚を配る
●30分経過 残りのカードを全部オークションで売る
●残り5分 引き抜きされたので、カード2枚もって別のグループに移るようとの指令が各グループのキャプテンにでる 

 競争条件であるルールはどんどん変わっていくもの。これは「現実世界」そのものですね。もっとも、「3-11」以後の現在の日本は、そんな程度の変化ではないでしょう。外部環境の大激変を体験中ですが・・・

 この課題演習では、与えられたルールと条件のもと、創造性をフルに発揮して、いまある資源(リソース)をいかに活用して最善の結果をつくりだすか、これが問われているわけです。そのためには、ありとあらゆることを試してみる意味がある。あるいは時間節約のため試してみないという選択もある。

 演習の結果については、得点数そのものに大きな意味があるものではありません。演習後のディスカッションがじつに多くの「気づき」の場になっていましたね! 


課題演習後のディスカションにおける「気づき」

 さまざまな「気づき」を引き出すシーリグ教授の手腕も見事ですね。学生の発言を促し、発言に対しては絶対に NO とは言わない。いったん受け止めて、それを自分のコトバに直して学生の言わんとすることを抽出する。

 シーリグ教授のこの見事なまでのさばき方は、かつて放送されていた「あっぱれさんま大先生」を思い起こさせるものがあります(笑)。

 「あっぱれさんま大先生」とは、日曜日の午後放送されていた、小学生相手に明石家さんまが先生役をつとめていたトーク番組のことです。小学生は何を言い出すかわからないので、そうとうな技量が要求されるものであることは言うまでもありません。

 ディスカッションでは、重要な指摘がいくつかありました。わたしなりにメモしたことを箇条書きで書き出しておきましょう。

●まずはルールがどんどん変更されていくことに対して、現実世界はこのようなものだということ。
●ルールの変更は環境変化、いかに早く気づき、速く対応するかという瞬発力が重要なこと。
●思い込みから解放されることが重要なこと。
●ルール違反のギリギリとは、自分のイマジネーションを越えること。
●思考の枠組みは自分で設定していること。
●グループへの忠誠心のこと。
●いいアイデアを出すチカラをもった人が自然にリーダーとして認められていくこと。
●創造はグループのチームワークそのもの、ブレーンストーミングだけではないこと。

 
 「説明書は2種類あった」という種明かしもなかなか衝撃的(?)なものがありました。説明書の表現方法で思考の枠組みまで設定されてしまうことは、なかなか怖ろしいことですね!

 壁でへだてて「二つの世界」をつくった意味。この二つの世界の違いは、テーブルの存在の有無ということにあります。テーブルという物理的な空間が、思考の枠組みを設定してしまうのですね。

 グループごとにテーブルがあった「テーブル派」の世界では、テーブルが枠組みを設定してしまうのに対して、「イス派」の世界では、いちはやくグループの壁を取り払って合併する方向にいってしまう。固定的ではなく、流動的なわけです。なぜなら、合併してはいけないというルールがないから。 

 とかく日本人はルールは変更してはいけないと思いがちですね。常識にもとらわれがち。

 コンプライアンス(compliance)を法令「遵守」と日本語に翻訳して、さらにがんじがらめになってしまっていますが、起業家たるもの、常識にとらわれず、自分が主導してルールを破ってあらたなルールをつくっていくのだという心意気が必要ですね。新たな製品やあらたなビジネスモデルが、世の中のルールを替えてきたことは言うまでもありません!

 よくいわれるように、日本人はルールに対して「~はしてはいけない」」と捉えがちですが、米国人は「~以外はなんでもしていい」と捉えるといわれています。実際は、米国人でもルールを破ることにはためらいもあるようですが、規制にかんする行動には、思考パターンの違いが表現されてしまうものです。

 なによりも今回の授業で、わたしがもっとも深く納得したのが、「いいアイデアを出すチカラをもった人が自然にリーダーとして認められいくこと」という指摘です。

 「知識社会」というコトバだけが一人歩きしていますが、知識そのものに大きな価値があるわけではないことが重要です。実際の場で生きた知識であってこそ、あらたなアイデアを生む源泉となり、創造行為に大いに貢献するだけでなく、リーダーシップの源泉ともなる

 そしていいアイデアが生み出されれば、それを創り出す人だけでなく、いいアイデアに共感する人、いいアイデアを積極的に広めていこうとする人がでてきて、いい意味で伝染していく。いいアイデアはまたさらにいいアイデアを引き寄せ、創造性が大いに発揮される環境ができあがっていく。

 そして、いいアイデアがカタチとなって製品やサービスとなって社会に貢献することにつながっていく。

 シーリグ教授が何度も強調していたように、「創造性はだれでも、どんな環境でも、発揮することができる!」のです。マインドバリアを取り去って、創造性を発揮しましょう。

 もちろん、教授もいうように、官僚的な大企業組織では困難なものであるのは、日本でも米国でも変わりありません。

 しかし、いいアイデアがあればそれじたいが大きな貢献になるのです。日本でもむかしから、「アタマをつかって知恵を出せ!」といわれてきましたが、アイデアをつくりだすための方法論をみにつければ、誰もがアイデアのチカラで貢献できるようになる! 

 アイデアを創り出すということは、じつにすばらしいではないですか!

  ............................................................
 
 第1回からずっと一貫してますが、学生たちに課題をあたえて、創造的にものを考えさせる演習のあと、レクチャーでポイントを解説する授業のすすめかたは、きわめてプラクティカルで、アタマにすっと入ってきます。

 今回は課題演習もクリエイティブなものであるだけでなく、課題終了後のディスカッションがまた、中身が濃く、「気づき」の多いセッションになっていました。

 なんといっても、自分で考えて試行錯誤する経験を経たあとは、何が重要なのか理解しやすいものですね。


 放送予定は以下のとおりです。いよいよ、全8回の授業は終盤にさしかかってきました。学生たちの「最終課題」は進行しているのでしょうか?

5月1日(日) 第1回 「ブレーンストーミングで可能性を探れ!」
5月8日(日)第2回 「名札をめぐる冒険」
5月15日(日)第3回 「最悪の家族旅行を考える」
5月22日(日)第4回 「6つの考える帽子」
5月29日(日)第5回 「30分で新製品を作る」
6月4日(日)第6回 「トランプで創造性を学ぶ」
6月12日(日)第7回 「あこがれの起業家に学ぶ」
6月19日(日)第8回 「新しいコーヒー体験(仮)」

 次回は、起業家たちをゲストとして招待するという授業。起業家たちのナマの声を聞ける機会をもてる学生たちがうらやましいですね。

 学びも多いが、集中力も要求される中身のきわめて濃い授業。これほど濃い 1時間もないのでは? そんな感想をもつ番組です。あと2回になってしまいましたが、日曜日の午後6時が楽しみですね!



<関連サイト>

「スタンフォード白熱教室」番組概要(NHK)

自分で自分を社長にする(Tina Seelig:ティナ・シーリグ)(YouTube 映像)



<ブログ内関連記事>

NHK・ETV 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 全8回 が始まりました

NHK・ETV 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第2回放送-「問題解決」の前に「問題発見」! 急がば回れ!

NHK・ETV 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第3回放送-「ブレインストーミングには悪いアイデアはない!」

NHK・ETV 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第4回放送- 「6色ハット」 は個人レベルの思考パターンと仕事スタイルを 「見える化」 する

NHK・Eテレ 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第5回放送-プレゼンは「つかみ」と「ストーリー」、そして限られた時間でアイデアをカタチにする




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2011年6月3日金曜日

書評 『新「伸びる人」の条件』(安達元一、フォレスト出版、2011)


「フェイスブック時代」だからこそ、コンテンツの中身で勝負する時代なのだ!

 「フェイスブック時代に生き残るための43の方法」と帯には銘打たれているが、中身はフェイスブックのうまい活用法ではない

 そういう内容を期待する人は、すでにその手の内容の本は大量に出版されているので、そちらを参照するべきだ。

 この本は、フェイスブックなどSNS時代だからこそ、むしろコンテンツの中身で勝負する時代なのだ、という重要な事実を説いている本である。

 とくにフェイスブックは、顔出しと実名が原則の世界であり、限りなくリアル世界と近づいている。リアル世界での成功法則を踏まえつつ、さらに一歩ワンランクアップすることが、個人として生き残るための重要なスキルとマインドセットにとなるわけだ。

 だから、内容は特別奇をてらったものではない。むしろコンスタントにヒットを出し続けたTV放送作家の発想は、発想そのものはオーソドックスであるとさえいえるものだ。しかも、そのすぐれた発想を生み出す源泉は、きわめてベタなものであることだ。

 わたしも、いちいちうなづきながら読んだが、読み捨てにするには実に惜しいエッッセンスが満載である。ただ。これをそう感じ取れるかどうか、読者次第だといっていいだろう。

 TV界では 「視聴率200%男」 とよばれるような著者でさえ、自分がやりたい企画をとおすためには2年越しでやったことがある!という記述がある。これには多くの人が勇気づけられるだろう。

 「フェイスブックに乗り遅れるな!」などと煽られている人は、ぜひ本書を手にとって自信を回復していただきたい。もちろん、若い世代はSNSを使いこなしてパワーアップするためには避けて通れない教えと受け取るべきだろう。


<初出情報>

■bk1書評「フェイスブック時代」だからこそ、コンテンツの中身で勝負する時代なのだ!」投稿掲載(2011年6月2日)
■amazon書評「フェイスブック時代」だからこそ、コンテンツの中身で勝負する時代なのだ!」投稿掲載(2011年6月2日)





目 次

まえがき フェイスブック、ツイッター…ソーシャルメディア時代突入!「伸びる人」の条件は変わった!
第1章 新「伸びる人」の仕事力-今すぐできる圧倒的な差を生むテクニック
第2章 新「伸びる人」の人間力-リアルなフォロワーがいないと成功できない
第3章 新「伸びる人」のまとめ力-多くの人をまとめる人がヒーローになる
第4章 新「伸びる人」のコンテンツ力-ソーシャルメディア時代はネタ数の勝負
第5章 新「伸びる人」の脳力-成長し続けるための脳の使い方


著者プロフィー

安達元一(あだち・もといち)

1965年群馬県生まれ。早稲田大学社会学部卒。「踊る!さんま御殿!!」、「奇跡体験!アンビリバボー」「SMAP×SMAP」、「とんねるずのみなさんのおかげでした」、「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」、「ドラえもん」などのヒット番組を数多く構成する放送作家。1週間の担当番組の合計視聴率が、200%を超えたことから「視聴率200%男」の異名を持つ。第42回ギャラクシー賞大賞、国連平和映画祭20077特別賞、第49回国際エミー賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<関連サイト>

『新「伸びる人」の条件』(出版社サイト)




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2011年6月2日木曜日

「ミャンマー投資セミナー」 (国際機関日本アセアンセンター)が、2011年6月21日に開催(入場無料)


 2011年3月30日(水)に実施予定だった「ミャンマー投資セミナー」が、来る6月21日(火)に開催されることになりました。

 ミャンマーに現地進出を考えておられる方は、ぜひ最新の「投資情報」を知る機会として活用されることを推奨いたします。

 以下に、国際機関日本アセアンセンターによるセミナーの紹介文を転載いたします。


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「ミャンマー投資セミナー」のご案内 
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国際機関日本アセアンセンターは、駐日ミャンマー連邦共和国大使館と共催にて「ミャンマー投資セミナー」を開催いたします。

豊かな天然資源と日本のおよそ2倍の肥沃な国土を持つミャンマーは、タイ、中国、インドに隣接する地理的ポジションと、優秀かつ低廉な労働力により、労働集約型産業の新たな拠点として注目されています。
本セミナーでは、国家計画・経済開発省 副大臣、日系進出企業他の方々より、新経済特区法やワンストップサービスをはじめとする最新の投資環境とビジネス機会についてご紹介いたします。

日時: 2011年6月21日(火)13:30-16:30 (受付開始13:00)
場所: ザ・プリンス パークタワー東京 ボールルームCD
     東京都港区芝公園4-8-1 TEL 03-5400-1111(代)
通訳: 日英同時通訳
参加費: 無料
定員: 200名 (お申込み多数の場合は抽選)

お申込み締め切り 2011年6月4日(土)


注: 一般公開となります6月5日以降のお申込につきましては、お申込み多数の場合、抽選となりますことご了承ください。

詳細・お申込みはこちらです。
https://data.asean.or.jp/invest/seminar/app_seminar.aspx?id=19164998
当選者の方には、6月17日までに受講票をメールにて発送いたします。

問い合わせ先
国際機関日本アセアンセンター 投資部 TEL:03-5402-8006

皆様のご参加を心よりお待ちしております。

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◆ミャンマー連邦共和国 経済特区法
 
2011年1月公布「ミャンマー連邦共和国 経済特区法」の和訳PDF版を
当センターウェブにて公開しました。下記URLよりご参照ください。
http://www.asean.or.jp/ja/asean/know/country/myanmar/invest/guide
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2011年6月1日水曜日

書評 『修羅場が人を磨く』(桜井章一、宝島社新書、2011)-修羅場を切り抜けるには、五感を研ぎ澄ませ!


修羅場を切り抜けるには、五感を研ぎ澄ませ!

 知識や情報をいくら詰め込んでも、修羅場は切り抜けられない。

 目で見ていたのではダメだ。アタマで考えていたのではダメだ、
 置かれている状況を客観視して、まずは全体像をつかむのだ。

 五感を研ぎ澄ましてフワっと感じるのだ。
 流れを感じよ!

 野生動物の感覚で瞬時の判断力を磨くのだ。
 五感を研ぎ澄ませ!

 そのためには、場数を踏むことだ。

 そして一瞬のひらめきが、修羅場を切り抜ける突破口になる。

 「400勝無敗の男」ヒクソン・グレーシーとも友人関係にある「無敗の雀鬼」桜井章一の、壮絶な人生から絞り出された淡々としてコトバ。

 具体的なエピソードはナマナマしいのに、著者の姿勢も筆致も妙に落ち着いているのはなぜか? 

 ここらへんに修羅場を切り抜けるヒントがありそうだ。自分すら突き放して見ることのできる視点と精神的な余裕だろうか。

 ぜひ身読したい一冊だ。


<初出情報>

■bk1書評「修羅場を切り抜けるには、五感を研ぎ澄ませ!」投稿掲載(2011年4月29日)
■amazon書評「修羅場を切り抜けるには、五感を研ぎ澄ませ!」投稿掲載(2011年4月29日)





目 次

第1章 修羅場が私に与えてくれたもの
第2章 修羅場ではどう動くべきか?
第3章 修羅場を超えていく力
第4章 修羅場は人を強くする
第5章 修羅場の時代を生き抜け!
おわりに

著者プロフィール

桜井章一(さくらい。しょういち)

東京・下北沢に生まれる。大学時代に麻雀に触れ、のめりこむ。昭和30年代後半、裏プロの世界で勝負師として瞬く間に頭角を現す。以来20年間「代打ち」として超絶的な強さを誇り、「雀鬼」の異名をとる。その間、一度も負けなしの無敗伝説を作った。現役引退後、著者をモデルにした小説、劇画、映画などでその名を広く知られるようになる。麻雀を通して人間力を鍛えることを目的とする「雀鬼会」を主宰し、全国から集まった若者を指導している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<ブログ内関連記事>

書評 『挫折力-一流になれる50の思考・行動術-』(冨山和彦、PHPビジネス新書、2011)

書評 『ヒクソン・グレイシー 無敗の法則』(ヒクソン・グレイシー、ダイヤモンド社、2010)-「地頭」(ぢあたま)の良さは「自分」を強く意識することから生まれてくる
・・姉妹編「「アタマの引き出し」は生きるチカラだ!」にアップしてあります

「地頭」(ぢあたま)について考える (1) 「地頭が良い」とはどういうことか?

「地頭」(ぢあたま)について考える (2) 「地頭の良さ」は勉強では鍛えられない 







(2012年7月3日発売の拙著です)









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